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第4話 キャッシュレス社会に待ったなし!まずは「お金の基礎」を育もう! 【マネー教育最先端のイギリスに住んでわかった「日本に足りないお金の教育」】

最近では、カード決済だけでなく、スマホでバーコードを読み取ったり、スマートウォッチやスマートリング(指輪型の決済手段)を「ピッ」とタッチするだけでお金が払える時代になりました。その結果、現金に触れる機会は以前と比べ随分と減っていますね。

便利になったとはいえ、親の行動をお手本にしながらお金の使い方を学ぶ子どもたちにとっては、目に見えないところでお金が動いていることを理解するのは難しいかもしれません。

このコラムでは、子どもがキャッシュレス社会にうまく適応していくために身につけておきたい「お金の土台」についてお伝えします。

日英のキャッシュレス浸透の現状

世界中の多くの国が、国家戦略としてキャッシュレス化を推進しています。

日本では、2023年時点で、キャッシュレス比率は39.3%(※1)と10年前の2013年には15.3%だったところから右肩上がりに増加しています。主な決済方法は、後払いのクレジットカード決済が83.5%とダントツ1位で、次いでコード決済が8.6%、電子マネーが5.1%となっています。
日本のキャッシュレス決済方法は多様で複雑です。目的に応じて、複数のアプリやカードを使いこなしている人も多いのではないでしょうか。

一方で、現在私が住むイギリスでは、2021年時点のキャッシュレス決済比率は65%(※2)を超えていました。別の調査結果では、パンデミックの間に、インフラが整ったことでさらにキャッシュレス化が進み、2022年時点の現金決済率は14%(※3)まで減少、一方で、現金感覚でキャッシュレス利用ができる即時払いのデビットカード決済率が全体の50%(※3)まで上昇しました。現金を利用していた人々がお金の管理が楽なデビットカードに移行したことがわかります。

また、デビットカードやスマホさえあれば、現金を全く使わずに日常生活を送ることができ、支払いも便利なタッチ決済が全体の37%を占めるほど普及しています。なお、日本で圧倒的人気のクレジットカードは、1割に満たない決済率です。
このように、イギリスのキャッシュレスは、カードもしくはスマホのタッチ決済の普及により、シンプルで利便性が高いのが特徴です

キャッシュレス化のメリット・デメリット

便利なキャッシュレスですが、不正利用や詐欺など身近でも十分に起こりうるリスクを理解しておく必要があります。利用者にとってのキャッシュレス化のメリットとデメリットは下記の通りです。

【メリット】

・カードの利用明細やアプリでお金の行方を追跡でき、収支管理が楽になる。
・アプリやWebサイトで記録を確認できるため、不正行為の防止につながる。
・大金を持ち歩く必要がなく、防犯上安心
・レジで紙幣や硬貨のやり取りを省略でき、スピーディーかつスムーズに決済できる。

【デメリット】

・カードやスマホの紛失・盗難により、個人情報漏洩リスクと不正利用の恐れがある。
・スマホを持たない人やデジタルに不慣れな人には不便になる可能性がある。
・QRコードの悪用やオンライン決済を利用した詐欺の恐れがある。
・お金の流れが見えにくくなり、使いすぎの可能性がある

キャッシュレス社会に放りだされる子どもたち

キャッシュレス決済の技術進歩は驚くほど速く、大人でも最新情報に追いつくのは困難です。お金を使う経験が浅い子どもにとってはなおさら理解が難しいでしょう。

大人がレジなどで、「ピッ」としただけで商品を受け取ったり、インターネット上でクリックした商品が翌日家に届いたりするのを見た子どもたちは、実はお金が動いていることは想像できません。キャッシュレス決済の仕組みを知らないのに、なんとなくコード決済などで支払っている子どももいるでしょう。

また、子どもが親のスマホやタブレットでオンラインゲーム中に、画面に表示された指示に従って、無意識に有料アイテムを購入してしまうような課金トラブルも増えています。さらに、カードやスマホの紛失により、個人情報が漏れたり悪用のリスクといったトラブルもあります。これらは安全なお金の管理や責任のある使い方を習得していないことが原因です

キャッシュレス化でも、まずは「お金の基礎」を重視するイギリスのマネー教育

お金は人類が発明した画期的な「ツール」です。様々なキャッシュレス手段は、より便利な支払いを目指して「ツール」が発展し、多様化したものです。つまり、「ツール」を上手に使いこなすためには、その特徴を知り、使い方に慣れることが大切なのです。

ここで、マネー教育先進国であるイギリスの学校教育での学びを参考にしてみましょう。
キャッシュレスが生活に浸透しているイギリスでは、キャッシュレスから学ぶのかと思いきや、義務教育が始まる5歳から、実際に現金を触ったり、イメージしたりしながら「お金の基礎」づくりから始めます。

カリキュラムでは、法定必須科目のMath(算数)において、量的感覚を養い、金融リテラシーを高めることを目的として、数えたり、考えたり、お金に関する計算の練習をします。また、準必須科目のPSHE(Personal, Social, Health and Economic)の「E(Economic)=経済」の分野で、お金の概念や管理方法、賢い消費者としての視点、お金にまつわるリスクや感情の管理、お金が生活で果たす重要な役割など、お金の知識を習得するだけでなく、実際に自分で判断し、行動できるためのスキルを身につけるための学びが推奨されています。

イギリスの学校で扱う「お金の基礎」には、下記のような力が含まれています。
・ お金の役割、種別、価値の尺度を理解する
・ 基本的なお金の計算ができる
・ ニーズとウォンツ、優先順位を考えることができる
・ 安全にお金を管理し、お金の動きを記録する習慣を持つ
・ お金の計画や予算を立てることができる  など

この「お金の基礎」を育みながら、現金以外のカードやスマホを使ったキャッシュレスの支払い方法、その種類や仕組み、そして詐欺や情報セキュリティについて徐々に学びを深めていくプログラムが用意されています。

学校や教員の裁量によって取り扱う内容は異なりますが、現地校のYear2(6、7歳クラス)に通う娘がPSHEの授業で受けた内容を紹介します。授業は週1コマ単位で、約1ヶ月にわたり、以下のようなテーマについて具体例をもとに考え、意見を出し合ったり、話し合ったりしながら学んだようです。
・お金はどこからやってくるか
・お金の稼ぎ方
・仕事とお金の関係
・収入や支出と予算の関係
・安全なお金の管理の仕方  など
このように、まずは基礎的なお金の概念から実際の管理方法まで幅広く学び、関連したテーマで複数のキャッシュレスの決済があることも知識として触れたようです

<まとめ>

今後もキャッシュレスは多様化、複雑化していくことが予想されます。だからこそ、考え方や行動の習慣となる「お金の基礎」づくりが大切になります。基礎があれば、時代や状況に応じて応用が効くのです。
次回は、キャッシュレスと上手に付き合うために家庭で実践できるいくつかのアイデアをご紹介します。

【出典】
※1.経済産業省,ニュースリリース「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
※2. 一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2023」
※3. UK Finance, UK Payment Markets 2023, PDFより筆者訳出

★2024年7月8日現在の情報です
(執筆:原田幸子

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