6月13日に、異次元の少子化対策の具体的な内容が盛り込まれた「こども未来戦略方針」が閣議決定されました。この施策によって、結婚や子供を持ちたいと思う若者は本当に増えるのでしょうか。施策の具体的な内容を分かりやすく解説致します。
<目次>
少子化が進んでいると言われているけど、本当?
2022年の出生数は、統計を開始した1899年以来、過去最低である77万人となりました。出生数の減少に伴い、人口減少も加速しており、2022年は80万人が自然減となっています。
現在、日本の全人口は1億2500万人ですが、このトレンドが続くと、今の子供たちがおじいちゃん・おばあちゃんになる2070年ころには、日本の人口は現在の3分の2程度の8700万人ほどになると見込まれています。
また、2030 年代に入ってしまうと若い世代が急激に減少してしまうため、少子化に歯止めがかからない状況になってしいます。このため、今から6~7年が少子化対策のラストチャンスと言われています。
「こども未来戦略方針」は何を目指しているのか
「こども未来戦略方針」は、多様な価値観を尊重しつつも、結婚したい・子供を持ちたいと希望するすべての人が、それを実現できるように後押しすることを目指しています。このために、政府は3つの基本理念を掲げています。
(1)若い世代の所得を増やす
(2)社会全体の構造・意識を変える
(3)すべての子ども、子育て世帯に切れ目なく支援する
政府は、若者・子育て世代の所得向上と、少子化対策を「車の両輪」として進めていくことが重要であると言っており、2024年から2026年までの3年間に集中的に少子化対策を行うとして、「こども・子育て支援加速化プラン」を打ち出しました。
「こども・子育て支援加速化プラン」の具体的な施策は?
①児童手当の拡充
今回の加速化プランでは、児童手当の所得制限が撤廃され、高校卒業まで給付期間が延長されることになりました。また、第3子以降の子供には、3万円の児童手当が支給されることとなるようです。
なお、「第3子」の数え方に注意が必要です。児童手当は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子どもの中で「第〇子」と数えます。 例えば、19歳、17歳、13歳の子どもがいるならば、13歳の子は第2子となります。
子供を2人産んだ家庭と2人産んだ家庭で、合計受給額を比較してみましょう。
【子供2人の家庭(2歳差、2人とも4月産まれ)】
第1子:246万円 第2子:246万円 合計:492万円
【子供3人の家庭(2歳差、3人とも4月産まれ)】
第1子:246万円 第2子:246万円 第3子:588万円 合計:1080万円
(注:第1子が高校を卒業すると、第3子は第2子に繰り上がるため受給額が減る)
第1子と第3子の年齢がどのくらい離れているかによっても合計受給額は変わりますが、上記の例の場合、3人子供を産んだ家庭では、2人の家庭より500万円以上多く、児童手当をもらえることになります。これは、経済的理由で3人目をあきらめかけている家庭への大きな後押しになるのではないでしょうか。
②出産等の経済的負担の軽減
2023年4月からは「出産育児一時金」が42万円から50万円に引き上げられ、さらに、2026年を目途に、出産費用(正常分娩)を保険適用とすることが検討されています。
出産費用が保険適用になった場合の自己負担分は、政府が負担することも検討されていますが、正式には決まっていないため、今後の動向にも注目していきたい施策です。
③育休時の収入確保
2025年度から生後一定期間は女性だけでなく、男性の育児休業を取得することを促進するため、最大 28 日間のパパ育休期間は、給付率を現行 の 67%(手取りで8割相当)から、80%程度(手取りで 10 割相当)へと引き上げることを検討しています。
男性が一定期間以上のパパ育休を取得した場合には、女性の産休後の育休取得について 、28 日間(パパ育休期間と同じ期間)を限度に給付率を引き上げることとしています。男性の育休取得率が上がりそうな施策ですね。
④こども誰でも通園制度
少子化の背景には、経済的な不安だけでなく、仕事と子育てを両立することが難しいこと、そして家事・育児の負担が女性にいまだに偏っていること、人と話す機会が減ってしまうことへの不安、などがあげられます。
このため、2024 年度から、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる「こども誰でも通園制度」 が検討されています。
さいごに
異次元の少子化対策というほど、インパクトのある施策がないのでは?というのが正直な感想ですが、全体を通してみると、結婚や出産・子育てに対して、それなりに国が若者や子育て世代のことを考えてくれていると筆者は感じています。
日本の将来を賭けたこの少子化対策の今後の動向に引き続き注目していきましょう。
★2023年7月28日現在の情報です
(執筆:渡部 ナオコ)
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