医療費控除やふるさと納税をした際に行う確定申告を、面倒に感じていませんか。
税務署へ行く時間が取れない方や、手続きが難しそうで医療費控除を受けることをすでにあきらめた方もいるかもしれません。
しかし、近年はスマートフォン(以下スマホ)で簡単に確定申告できる体制が整ってきています。
本記事では、主に会社員の方向けに、スマホで確定申告をする際の事前準備と手順をご紹介します。(※2024年12月末時点の情報です。申告の際は最新情報をご確認ください)
スマホで確定申告をする際の事前準備
スマホでの確定申告には「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つの方法があり、どちらも国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーにアクセスして行います。
申告をスムーズに進めるためには、アクセスの前に準備をしておくことが大切です。2つの方法について、準備するもの・することを紹介します。
マイナンバーカード方式の場合
マイナンバーカード方式の場合は、次の3つを準備します。
1.マイナンバーカード
2.マイナンバーカード読取対応のスマホ
3.マイナンバーカード発行時に設定したパスワード2つ
・利用者証明用電子証明書(数字4桁)
・署名用電子証明書(英数字6~16文字)
またマイナンバーカードを読み取るには、マイナポータルアプリを利用しますので、事前にインストールが必要です。なお、ご自身のスマホがマイナンバーカードの読み取りに対応しているかどうかは、以下のサイトで確認できます。
マイナポータル「マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。」
ID・パスワード方式の場合
ID・パスワード方式は次のように準備します。
・税務署にてID・パスワードを取得する
→取得する時は運転免許証などの本人確認書類が必要
→また税務署で職員の対面による本人確認が求められるため、税務署に行く手間がかかる
ID・パスワード方式は、マイナンバーがなくてもID・パスワードを入力することで、スマホでの確定申告が行えます。ただしID・パスワード方式は、マイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対応です。
そのため本記事では、マイナンバーカード方式を利用したスマホでの確定申告について紹介をします。
スマホでの確定申告は年々便利になっている
スマホでの確定申告は少しずつ利便性が向上しています。近年の動きは次の通りです。
マイナポータル連携が進んでいる
マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービスです。オンラインで行政手続きのやり方を確認したり、申請することが可能です。確定申告書等作成コーナーでは、マイナポータルから情報を自動入力する連携機能が利用できます。給与所得の源泉徴収票や、控除証明書等が連携の対象で、連携できる範囲は年々増えているのです。
スマホで確定申告ができるケースが年々増えている
具体的なケースは後述しますが、スマホで確定申告ができるケースは年々増えています。
例えば、以前はスマホでは青色申告決算書や収支内訳書は作成できませんでした。しかし令和4年分からは、スマホから確定申告書等作成コーナーにアクセスすることで、それらの作成・申告も可能になりました。
令和7年1月からの変化
令和7年1月(令和6年分確定申告)からは、よりスマホでも操作しやすい画面に変更され、スマホ用電子証明書にも対応するようになりました(令和7年1月時点ではandroidのみ)。
これまでe-Taxを利用する際は、スマホでマイナンバーカードを読み取る必要がありましたが、スマホ用電子証明書を利用できるようになったことで、令和7年1月からは、その必要がなくなります。対応機種に制限はありますが、マイナポータルアプリからスマホ用電子証明書の申し込みをすることで、スマホに「スマホ用電子証明書」の機能を付加できるので、可能な方は活用すると良いですね。
参考 国税庁「令和6年分の確定申告はスマホとマイナポータル連携でさらに便利に!」
スマホで確定申告ができるケース
会社員の方が確定申告するのは次のようなケースです。そのすべてにおいて、スマホでの確定申告が可能です。
医療費控除、もしくはセルフメディケーション税制を受ける
医療費控除とは、1年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超えた場合に利用できる所得控除です。
また、健康診断等の健康保持増進・疾病の予防の取組を行っている方の場合は、1年間に12,000円を超える対象医薬品を購入すると、超過分の金額(上限88,000円)について医療費控除の特例である「セルフメディケーション税制」という所得控除を利用できます。セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は、両方利用することはできず、どちらかを選んで使います。
損益通算や譲渡損の繰越控除を受ける
特定口座で取引した株式投資で損した方が、他の株式で得られた利益や配当等からその損を差し引けるのが「損益通算」です。同じ証券会社であれば特定口座内で自動的に損益通算してもらえますが、他の証券会社の特定口座と損益通算したいときは、確定申告が必要です。
また、損益通算をしても損失を引き切れなかったときは、確定申告によって譲渡損を3年間繰り越すことができます。
住宅ローン控除を受ける
住宅ローンを利用して家の購入等をした方が、年末時の住宅ローン残高に応じて所得税や住民税の控除が受けられる制度です。会社員の方の場合、2年目以降は年末調整で控除を受けることができますが、初年度は確定申告が必要です。
ふるさと納税の控除を受ける
ふるさと納税ワンストップ特例の申請をしている場合は、原則として確定申告は不要です。ただし、ワンストップ特例の申請をしていない方や「2か所以上から給与等の支払いを受けている」「年間の給与収入が2,000万円以上」といった所定の要件に当てはまる方は確定申告が必要です。
不動産を売却した
不動産を売却して譲渡益(※)を得た方は、原則として確定申告しなければなりません。なお、譲渡損が出た場合は確定申告の義務はありませんが、損益通算や繰越控除などを受けたい場合は確定申告をします。
※原則として、売却益から取得費と譲渡にかかった費用を差し引いたものが譲渡益となります。3000万円特別控除などを利用した結果、譲渡益が0円となっても確定申告は必要です。
贈与税の申告がある
1年間に基礎控除である110万円を超える贈与を受けた場合は申告が必要です。
参考 国税庁「ケース別の情報|令和6年分 確定申告特集」
スマホで確定申告をする際の手順
スマホで確定申告をする場合は、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを活用します。大まかな流れは次の通りです。
1.確定申告書等作成コーナーにアクセスする
2.申告したい項目を選んで、画面に沿って情報を入力する
※マイナポータルが連携可能な部分については、連携によってサイト上の申告書に自動で入力されます。
会社員の方向けに、スマホで確定申告する際のステップを詳しくご紹介します。ここでは、マイナポータルと連携することとします。
ステップ1:事前準備
必要な書類は事前に準備しておきます
<共通して必要な書類>
収入に関する書類 | ・給与所得の源泉徴収票 ・その他の収入があれば、収入に関する書類 (公的年金・生命保険の一時金等) |
<申告内容に応じて準備する書類(一例)>
損益通算する場合 | ・特定口座年間取引報告書(証券会社より事前に入手) |
株式等の譲渡損の | ・特定口座年間取引報告書(証券会社より事前に入手) ・前年度の確定申告書類の控え (前年から繰越された上場株式等に係る繰越損失がある場合) |
ふるさと納税の場合 | ・寄附金受領証明書 |
住宅ローン控除の場合 | 住宅の取得に関する書類 ・取得時の売買契約書の写しまたは工事請負契約書の写し ・住宅および土地の登記事項証明書の原本 ・年末残高証明書 |
iDeCo加入または | ・小規模企業共済等掛金払込証明書 |
生命保険料控除を | ・生命保険料控除証明書(保険会社より事前に入手) |
※マイナポータル連携の場合は、マイナポータルから取得したデータの内容が自動で表示されます
ステップ2:事前入力
スマホで確定申告書等作成コーナーにアクセスしたら、「作成開始ボタン」をタップして以下の準備をします。
1. | 作成する申告書等の選択 | 給与所得者の場合は「所得税」を選択 |
2. | 税務署への提出方法に関する質問 | e-Tax(マイナンバーカード方式)を選択 |
3. | 申告内容に関する質問 | 申告する収入等をチェック「給与」、損益通算を行う場合は「特定口座の株式譲渡・配当」など |
4. | マイナンバーカードを読み込む | マイナポータルのサイトでログイン 事前に取得していた「利用者証明用電子証明書のパスワード」を入力 |
5. | 登録情報の確認 | 2回目以降の場合は、e-Taxに登録されている情報が表示されるので、登録情報を確認し、誤りがなければ次へ ※e-Taxを初めて利用する場合は画面にそって初期設定 |
ステップ3:収入金額の入力
給与所得や雑所得、生命保険の一時金等を入力します。
・給与所得の場合は「給与所得の源泉徴収票」の入力(源泉徴収票を撮影して情報を読み取ることも可能)
・複数の証券会社の損益を通算する場合は「特定口座年間取引報告書」の入力
・株式等の譲渡損について繰越を行う場合は「上場株式等に係る繰越損失」の入力
※上記の書類について、マイナポータル連携の場合はマイナポータルから取得したデータの内容が表示されます。
~「特定口座年間取引報告書」の入力方法~
株式等の売却・配当等の入力画面から「特定口座年間取引報告書」をタップして、報告書の内容を入力します。
「特定口座年間取引報告書」は事前に各証券会社から入手しておきます。PDFファイルやXMLファイルで入手できます。
・PDFファイルの場合:見本を確認しながら情報を手入力
・XMLファイルの場合:読み込ませることで、情報が自動入力されます。
~「上場株式等に係る繰越損失」の入力方法~
上述の通り、損益通算してもなお控除しきれない損失がある場合、翌年以後3年間にわたり、上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます。
株式等の売却・配当等の入力画面から「上場株式等に係る繰越損失」を、昨年分の確定申告表から「上場株式等にかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」の数字を入力します。
ステップ4.:控除等の入力
雑損控除や医療費控除、生命保険料控除など、複数の控除がありますので、該当する控除をタップし入力します。控除に応じて必要書類を準備しておきます。
~寄付金受領証明書等の入力方法~
寄付金の受領証明書等の内容を1件ずつ画面に沿って入力します。※「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用している方も、確定申告をする方は寄付金控除の入力が必要です。
画面に沿って、以下のような質問に答えます。事前に情報をメモしておくとスムーズです。
【住宅に関する事項】
・住宅の区分(新築/買取再販/中古)
・契約締結年月日
・住宅の取得対価の額(売買契約書や工事請負契約書に記載された金額)
・自己の占有部分の床面積(小数点第2位まで)
・自己の持ち分
・住宅に居住を始めた日
【土地に関する事項】
・土地の取得対価の額
・土地の面積
※マンションの場合は「1棟の土地の面積/一棟の住宅の総床面積」、「(共有名義の場合)自己の持ち分」
【住宅や土地の取得に関する補助金等】
・補助金等の有無と金額
【住宅借入金等の年末残高】
・住宅借入金の内訳
・年末残高、当初金額
医療費控除の手順についてはこちらの記事を参考にしてください。
「スマホで簡単に!今年こそ医療費控除申請にチャレンジ!/家計整理アドバイザーが伝える家計管理のコツ㉑」
※2023年1月時点の記事(動画)です。配信時よりもマイナポータル連携が進んでいるため、連携させるとよりスムーズに申告可能です。
ステップ5:住民税に関する事項の入力
住民税等に関するいくつかの質問に回答します。画面の案内に沿って入力をしてください。
ステップ6:送信
入力内容を確認し送信します。特記事項があればここで入力します。
送信後に「送信完了」が表示され、閉じると「送信結果の確認」画面が表示されるので、内容を確認します。
ステップ7:申告書の控えと入力データの保存
送信した申告書の控えを保存します。ダウンロードしてスマホのなかに保存しておきます。「帳票表示・印刷」をタップすれば、印刷も可能です。
まとめ スマホでの確定申告は準備が肝心!
スマホでの確定申告は、基本的には画面に沿って必要事項を入力していきます。そのため、事前に必要書類を用意しておくことや、自動で情報が入力されるマイナポータル連携を行っておくことがスムーズな申告のポイントです。興味がある方は、ご自身の行いたい確定申告に必要な準備を確認したうえでトライしてみてください。
(参考サイト)
令和6年分 確定申告特集
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/
スマホとマイナンバーカードでe-Tax!|令和6年分 確定申告特集
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/smartphone-mynaportal-etax/
確定申告書作成コーナー
https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl
★2025年1月28日現在の情報です
(執筆:横山晴美)
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