先日、50代の自営業の方から、国民年金基金と個人型確定拠出年金(iDeCo)のどちらを選ぶべきかという相談をいただきました。国民年金基金は安定的に決まった金額を受け取れる一方で、iDeCoは運用によって資産を増やせる可能性もあるため、iDeCoの方が魅力的に感じる人も多いようです。この二つの制度はどちらも一長一短があり、ご自身の状況や価値観に合わせて選ぶ、または両方使っていくことを考えると良いですね。先日、みらいの無料相談会にてお答えした内容をシェアしますね。
※2024年12月20日時点での内容です。拠出限度額など今後変更する可能性があるためご注意ください
50代自営業で、現在満額で国民年金基金に掛金を拠出しています。運用成績が良いと聞いて、iDeCoに乗り換えようと思っていますが、そもそもできるのでしょうか?乗り換えた方がよいですか?
【回答】
国民年金基金とiDeCoを併用することは可能ですが、両制度合わせて月68000円が掛金の上限となります。しかし、国民年金基金は一度はじめたら、掛金の減額はできますが、原則途中でやめられません。掛金をゼロ円にすることができないのです。そのため国民年金基金をやめて、月68000円をiDeCoに掛けることはできません。ちなみにどちらの制度でも、掛金全額が所得控除の対象となり、掛けている間中、ずっと所得税と住民税を減らせるため、積み立てている間の節税効果は同じ金額なら全く同じです。
iDeCoだからと言って、必ずしも増やせるとは限らないことに注意が必要です。しかも自営業の場合、iDeCoを積み立てられるのは原則60歳未満まで。運用自体はそのまま75歳まで続けられますが、個人的には50代の今、無理にiDeCoに乗り換える必要はないのでは?と思います。もし、運用自体を60歳を超えても続けていくことを視野に入れて、市場の成長と一緒に育てていきたい場合は、国民年金基金の掛金を減額し、その分をiDeCoに回してもよいでしょう。
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そもそも、国民年金基金とiDeCoはどのようなちがいがあるのでしょうか。
国民年金基金とiDeCoの主なちがい
・国民年金基金は将来決まった金額を受け取れる/iDeCoは運用状況によって変動する(損する可能性もある)
・国民年金基金はインフレリスクがある/iDeCoは投資先によってはインフレ対策になる
国民年金基金は、定額の掛金を払うことで将来的に決まった額の年金を受け取れる「確定給付型」の年金制度です。つまり、掛けた金額に対して確実に受け取る金額が保証されているため、老後資産を安定して作ることができます。しかし、インフレによって物価が上昇しても、受け取る年金額は増えません。そのため、老後の生活水準が上がった場合には、実質的に受け取る金額の価値が減少するリスクがあります。
一方でiDeCoは、自身で選んだ投資信託で運用する制度のため、運用状況によっては損する可能性があります。しかしもし株式に投資するファンドを保有していれば、インフレ対策になり得ます。なぜなら、インフレ下でモノ・サービスの価格が上昇すれば、企業の売上が上がりやすくなり、その結果、株価が上昇する可能性が高まるからです。
・国民年金基金は終身年金・確定年金でしか受け取れない/iDeCoは年金受取・一時金受取・併用から選べる
国民年金基金は、加入プランに応じた終身年金や確定年金でしか受け取り方法は選べませんが、iDeCoは、受取方法が柔軟で、年金として受け取るだけでなく、一時金として一括受け取ることも可能です。これにより、受け取るタイミングや方法を柔軟に選べるという点が、国民年金基金と大きく異なります。
・国民年金基金では、配偶者の分の掛金も合わせて所得控除の対象となる/iDeCoは本人のみ
国民年金基金とiDeCoのどちらも、掛金は全額所得控除の対象となり、節税効果があります(国民年金基金は「社会保険料控除」iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」)。しかし、国民年金基金は配偶者等の掛金を負担した場合は配偶者等の分も所得控除の対象となるため、配偶者は対象外となるiDeCoより、国民年金基金のほうがより多くの所得控除が受けられる可能性があります。
・国民年金基金は手数料はかからない/iDeCoは毎月手数料がかかる
国民年金基金は一切手数料はかかりませんが、iDeCoを始めると掛金拠出中は最低月171円(金融機関によって異なる/160円のところもある)、拠出なしの保有のみでも、少し安くはなりますがかかり続けます。
まとめ
国民年金基金とiDeCoにはそれぞれ異なる特徴があり、50代でどちらを選ぶかは、ご自身のリスク許容度や資産形成のゴールによっても異なります。途中でやめられない国民年金基金は、終身での安定した年金受取額を保証するものの、インフレリスクに弱いというデメリットがあります。一方、iDeCoは運用次第で資産を増やすチャンスがありますが、手数料や運用リスクを考慮する必要があります。
もしiDeCoに少しでも興味がある場合は、国民年金基金の掛金を減額し、iDeCoと併用することが良い選択肢かもしれません。また、余剰資金がある場合は、NISAなど他の投資枠も検討し、老後の資産形成に向けて多様な手段を取ることをおすすめします。
☆2024年12月20日現在の情報です
(執筆:鈴木さや子)
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