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身近な人の介護に備えて知っておきたいこと~申請から要介護認定までの流れとポイント~

ご家族が高齢になり、体調や生活に不安を感じるようになると、「介護サービスを利用したい」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんなときに、最初のステップとなるのが「要介護認定」です。これは公的な介護保険サービスを受けるために欠かせない手続きです。

この記事では、要介護認定とは何か、介護の区分の違い、そして申請から認定を受けるまでの流れについてなど、わかりやすくご紹介します。大切なご家族の安心した暮らしを支えるために、ぜひ参考にしてください。

こちらの記事もご覧ください。
「身近な人の介護に備えて知っておきたいこと~基本編~」

要介護認定とは?

要介護認定とは、年齢や病気、ケガなどがきっかけで介護が必要になった人について、どの程度の介護が必要かを判断するステップです。65歳以上の高齢者(または40歳以上65歳未満で特定疾病(※)がある人)が対象で、介護の必要性に応じて、「要支援」または「要介護」といった区分が決まり、介護のレベル(要介護度)が認定されます。

この認定を受けることで、公的な介護保険サービス(デイサービス、ホームヘルプ、ショートステイ、施設入所など)が、1〜3割の自己負担で利用できるようになります。

※国指定の特定疾病(16種類)の詳細は厚生労働省HPをご覧ください。
厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html

要支援と要介護の違い

要介護認定には要支援要介護の2種類があります。要支援は、買い物や掃除など、少しだけサポートをすれば自立した生活ができる状態です。一方の要介護は、食事・入浴・排せつなどに、継続的な支援が必要な状態をいいます。さらに介護の程度によって、要支援は2区分要介護は5区分に細かく分類されており、数字が大きくなるほど介護の必要度が高くなります(「表1」参照)。

上記の表は、区分ごとの状態の目安を示した一例です。実際の要介護認定の区分は、厚生労働省が定めた「要介護認定基準時間(生活の中で必要とされる介護時間を見積もったもの)」に基づいて判定されます。
※参考:厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/kentou/15kourei/sankou3.html

また、要介護認定は、日常生活のサポート面だけではなく、ものごとの理解力や会話のやりとりといった認知機能の状態も含めて判断されます。

申請から要介護認定までの流れ

要介護認定を受けるにはどうすれば良いのかをみていきましょう。

誰がいつ申請するの?

要介護認定の申請は、認定を受ける本人、または家族が行いますが、場合によっては地域包括支援センターの職員が代行することもできます。

本人の体調や生活の中で気になる変化が見られたときが、申請を検討するタイミングです。たとえば、「つまずいたり転んだりすることが多くなった」「同じ話を何度も繰り返す」「薬の管理が難しくなってきた」などの変化や、食事や着替え、入浴など、ひとりでできていたことができなくなってきた状態が目安になります。また、病気やケガで入院、手術を受けた後、自宅での生活に不安があるような場合も申請の検討が必要です。

心配なことがあれば、まずは市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。

申請から要介護認定までの流れ

要介護認定の申請から認定を受けるまでの流れは<図1>のようになります。

① 要介護認定の申請
申請は、お住まい(認定を受ける本人)の市区町村の窓口で行います。要介護認定の申請の際、65歳以上は介護保険被保険者証特定疾病の40~64歳は健康保険被保険者証が必要です。

② 認定調査(訪問)
市区町村の調査員が、本人の自宅や施設などを訪問して、身体面や認知機能、生活状況などの調査(基本調査 74 項目※)を行います。本人はもちろんですが、家族から見た様子や意見を伝えることも大切です。調査にはできるだけ家族も立ち会うのが望ましいでしょう。
※参考:厚生労働省「認定調査票」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000127894.pdf

③ 主治医意見書の提出
かかりつけ医は、市区町村からの依頼を受け、本人の健康状態について記載した主治医意見書を作成します。かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受ける必要があります。
※意見書作成料の自己負担はありません

④ 一次判定(コンピュータ)
訪問調査の結果(②)と主治医意見書(③)の一部の項目をコンピューターに入力し、全国一律の判定方法で要介護度の判定が行なわれます。

⑤ 二次判定(介護認定審査会)
コンピューターによる一次判定の結果(④)と主治医意見書(③)に基づいて、介護認定審査会による二次判定が行われます。介護認定審査会は医師・看護師・ケアマネージャーなど、保健・医療・福祉の各分野から選ばれた専門家で構成されています。

⑥ 認定
市区町村は、介護認定審査会の判定結果に基づいて要介護認定を行い、その結果を申請者に通知します。認定の区分は、要支援1・2、要介護1~5までの7段階と非該当です。認定の通知は、申請から原則として30日以内に行われます。

要介護認定を受けた後に介護保険サービスを利用するには?

要介護認定を受けると、介護保険サービスが利用できるようになります。利用にあたっては、どのようなサービスを、いつ、どのくらい利用するかをまとめた計画書(ケアプラン)の作成が必要です。要支援の場合は「介護予防サービス計画書」、要介護の場合は「介護サービス計画書」といいます。

要支援の方は地域包括支援センターに相談し、要介護の方は市区町村の指定を受けた事業所に依頼をします。依頼を受けた介護支援専門員(ケアマネージャー)が、本人や家族と相談しながら、心身の状態や希望に応じた計画書を作成します。

作成された計画書に基づいて、介護保険サービス(デイサービス、ホームヘルプ、ショートステイ、施設入所など)が利用できるようになります。なお、計画書(ケアプラン)の作成には費用はかかりません。

認定の見直し・更新のタイミング

要介護認定には有効期間が定められています。初めての申請で認定を受けた場合(新規申請)の有効期間は原則6ヵ月で、2回目以降の更新(更新申請)は原則12ヵ月です(「表2」参照)。ただし、申請者の状態に応じて必要と認められた場合は、期間が短縮または延長されることもあります。

有効期間を過ぎると介護サービスの利用ができなくなるため、有効期間が満了する前の更新申請が必要です。

また、体調の変化や認知症の進行などによって、現在の介護度が実際の状態に合っていないと感じたときは、有効期間の途中でも要介護認定の見直しを申請(変更申請)することができます。

要介護認定は、介護保険サービスを利用するための大切な最初のステップです。申請の流れや認定の仕組みをあらかじめ理解しておくことで、介護が必要になったときスムーズに支援を受けるための手続きができます。

家族の「いつもと違う様子」に気づいたら、ためらわず早めの準備をしましょう。小さな不安を見逃さずに行動することが、安心して介護に向き合う生活へとつながります。

★2025年5月24日現在の情報です
(執筆:世古瑞智子   監修:張替 愛
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