2017年1月から現役世代のほぼ全員が加入できるようになったiDeCo(個人型確定拠出年金)。厚生労働省のHPによると、加入者数はどんどん伸びて約90万人になりました(平成30年4月30日現在)。
確定拠出年金には個人型(iDeCo)と企業型があり、企業型の加入者数は約650万人。iDeCoのなんと7倍以上!と結構な規模です。
夫がもともと企業型DCに加入していて、妻も最近iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入した、なんてご家庭も増えてきているのではないでしょうか。わが家も同様です。
そこで、気づいちゃったんです。
夫が加入する企業型DCと、わたしが加入するiDeCoの運用商品ラインナップの違いに。
ラインナップの商品数の違いもさることながら、わたしがすごく気になったのは、運用商品のコスト「信託報酬」の違いです。
夫の企業型DCの運用商品は、信託報酬が高いんです。
たとえば、国内株式運用のTOPIX連動型投資信託で比較すると
商品名 | 信託報酬(年率) | |
企業型DC | インデックスファンドTOPIX(日本株式) | 0.6696% |
iDeCo(SBI証券) | 三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド | 0.1728% |
信託報酬が約4倍も違います。
TOPIXに連動することを目指すパッシブ運用ならば、運用成果はほとんど同じ。ならば、運用コストにあたる信託報酬は低いほうがよいことになります。
iDeCoは加入者が自分で運営管理機関を選びますが、企業型DCは勤務する会社が採用したプランに加入するのみ。つまり、会社が用意したラインナップから運用商品を選ぶしかないのです。
iDeCoのような低コストの投資信託をラインナップしてーーー!
と言いたくなる企業型DCの加入者も少なくないはず。
そこで今回のコラムでは、確定拠出年金に「つみたてNISA」を加え、これらの資産形成支援策を検証した興味深い記事が「企業年金総合プランナー 第31号」にありましたのでご紹介します。
~「つみたてNISA」、iDeCo、充実する資産形成支援策で、企業型DCは検証を迫られる~(イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 島田知保)
記事では、「つみたてNISA」「DC専用」「DC対応(公募投信でDCにも対応しているもの)」それぞれに採用されている投資信託の「信託報酬」を比較しています。
すると、採用されている投資信託全体では、
DC対応(平均1.138%)>DC専用(平均0.794%)>つみたてNISA(平均0.575%)
という結果(すべて年率)。「つみたてNISA」の検証は、債券運用やREITを除いており、より信託報酬の低さが伺えます。
ちなみに、同じようにパッシブ運用の投資信託に絞って信託報酬を比較すると、DC専用>DC対応>つみたてNISA、の順に。
その背景には、
・「つみたてNISA」の対象商品は、厳しいコスト条件の下、ふるいにかけられている
・最近の投資信託のコスト競争の影響で、商品の低コスト化が進んでいる
・iDeCoに対応するため、DCプランに低コスト商品が提供されている
・DC専用は作られた時期が古く、信託報酬が高い
があり、ひとことで言えば、時代の流れに対応しているのが「つみたてNISA」。対応できていないのが「DC専用」となります。
ゆえに「企業型DC」を担当する運営管理機関やプランスポンサーは、
・時代に応じた運用環境を加入者に提供する必要あり
・高コストのDC専用パッシブの値下げ、低コスト投信への切り換えを考えるべき
と提唱しています。
そのほか記事では、パッシブ投信だけに偏るのではなく、低コストのパッシブ投信の品ぞろえに良質なアクティブ投信を加える重要性にも触れています。
なぜなら、良い企業と期待できない企業の差が明確ならば、アクティブ運用は有効な投資手段になるから。
そして、コストが高い印象のアクティブ運用でも、「DC専用」「DC対応」の商品のなかには、実は「つみたてNISA」より低コストの商品もあるんです。
ただし、年率2%を超えるような高い信託報酬のものあり、玉石混合と言わざるを得ず。
多様な選択肢を提供するデメリットにならないよう、運営管理機関やプランスポンサーは十分に注意して商品選択をして欲しいものです。
「企業型DC」の加入者は、自ら運営管理機関やプランを選ぶことが出来ません。それだけに時代の流れに合ったプランの見直し、ラインナップ商品のコストや内容のチェックを積極的に実施していただきたいですね。
★2018年6月22日現在の情報です