要介護認定を受けると、介護保険のさまざまな介護サービスが利用できるようになります。「どんなサービスがあるの?」「自分や家族にはどれが合っているの?」といった疑問を持たれる方も多いでしょう。
この記事では、介護保険で受けられる主なサービスの種類や特徴をやさしく解説します。
介護サービスとは?
介護サービスとは、介護保険制度(※)によって、要介護認定を受けた方が1~3割の自己負担で利用できる介護支援サービスです。介護サービスは大きく分けて、自宅で暮らしながら支援を受ける『居宅サービス』、介護施設に入所してケアを受ける『施設サービス』、慣れ親しんだ環境で生活を続けられるように各地域が提供するサービスを受ける『地域密着型サービス』の3つがあります。
※介護保険制度:40歳以上の国民みんなが保険料を出し合って、介護を必要とする高齢者やその家族を社会全体で支え合う仕組み
●参考記事●
「身近な人の介護に備えて知っておきたいこと~基本編~」
「身近な人の介護に備えて知っておきたいこと~申請から要介護認定までの流れとポイント~」
自宅で安心して暮らすための「居宅サービス」
居宅サービスは、自宅で暮らしながら利用できる介護サービスのことです。要介護や要支援の状態にある方が、住み慣れた自宅で安心して生活を続けられるように支援が受けられます。
居宅サービスは、自宅に専門スタッフ(ホームヘルパー)が訪れて、身の回りの生活支援を『自宅で受けるサービス』と、介護を受ける方が介護施設などに通って、『施設で受けるサービス』があります。
暮らしを支援する訪問サービス
自宅で受けるサービスは、たとえば「入浴時の転倒が心配なため、介助を依頼する」「長時間の歩行が難しいため、買い物を代行してもらう」「通院のための送迎をお願いする」といった生活援助です。(「表2」参照)
施設の利用で元気をサポート
施設で受けるサービスには、日中だけ利用する通所サービス(デイサービス・デイケア)と、短期間施設に泊まる短期入所サービス(ショートステイ)があり、どちらも自宅での生活を続けるためのサポートとして活用できます。(「表3」参照)
通所サービスでは、施設に通って、ゲームや体操などのレクリエーションを楽しんだり、リハビリを受けたりして、心身の健康を保ちます。また短期入所サービスでは、24時間体制で介護を受けられますので、ご家族が旅行や仕事などで一時的に介護が難しいときでも安心して利用できます。
※ 要支援1・2の方は「介護予防・日常生活支援総合事業」により、要介護者とほぼ同様のサービスを利用できますが、内容や回数は自治体により異なる場合があります。
安全な暮らしの環境を整えるサポート
その他にも、介護ベッドや車いすのレンタルや購入費の給付や、「自宅のトイレや階段に手すりを設置する」「スロープをつける」などのような、バリアフリー化のための改修工事費の支給といった環境を整えるサービスの利用もあります。(「表4」参照)
これらのサービスの中には上限額が設定されている場合もありますが、利用者は1~3割(所得に応じて)の費用負担で利用することができます。
専門施設で安心ケアの「施設サービス」
施設サービスは、要介護の認定を受けた方が、自宅ではなく介護施設に入所して、介護や生活支援を受けるサービスです。日常生活に継続的な介護が必要で、自宅での暮らしが難しい方が対象となります。
施設にはいくつかの種類があり、それぞれ目的や支援内容、入所の条件が異なります。たとえば、生活支援を中心とする施設(特別養護老人ホーム)もあれば、リハビリや医療的ケアを重視する施設(介護老人保健施設や介護医療院)もあります。(「表5」参照)
どの施設が合っているかは、ご本人の状況や生活の希望によって異なるため、入所を検討する際は、必ず事前に施設の特徴や条件をよく確認しましょう。事前に施設見学や、説明を受けてから決めることが大切です。
身近な地域のつながりで支援する「地域密着型サービス」
地域密着型サービスは、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう支援を受けるサービスです。このサービスは、市町村から指定された事業者が提供し、その市町村に住んでいる人だけが利用できます。
安心の24時間見守りサービス
専門スタッフが日中や夜間の決まった時間に自宅を訪問し、必要な支援を受けることができます。また、緊急時にも対応してもらえますので、24時間安心です。(「表6」参照)
なじみの場所や人と過ごす施設利用
地域密着型の施設の利用(通所・短期入所)は、なじみのある場所や顔なじみの人と過ごせるのが特徴です。さらに、通所・短期入所に加え、訪問介護を組み合わせた複合型サービスもあり、必要に応じて柔軟に支援が受けられます。(「表7」参照)
※ 要支援1・2の方は、対象となっていないサービスについても「介護予防地域密着型サービス」として、要介護者とほぼ同様の支援を受けられますが、内容や回数は軽減設定の場合があります。
家庭的な環境の入居施設
地域密着型の入居施設は、ご本人の住み慣れた地域で少人数の家庭的な雰囲気の中、日常生活のサポートや、介護の支援を受けながら安心して暮らせます。(「表8」参照)
地域密着型サービスは、自宅での暮らしを支えるという意味では居宅サービスと目的は同じですが、身近な地元の施設で顔なじみの関係を大切にした、温かいケアが受けられるのが特徴です。小規模な施設で、一人ひとりに寄り添ったきめ細やかな支援が受けられるのも魅力のひとつでしょう。こうした地域に根ざしたサービスだからこそ、環境にもなじみやすく、安心感がうまれます。
介護サービスは、介護を必要とする方が自宅や施設などで必要なサポートを受けながら、その人らしい暮らしを続けていくための大切な仕組みです。ご本人やご家族の思いに寄り添ったサービスを選ぶことが、安心して穏やかな毎日を送ることにつながります。
無理なく、ご家族にふさわしい介護のかたちを見つけられるよう、少しずつ準備をしておきましょう。
なお、今回ご紹介した介護サービスを受けるには、どのようなサービスを、いつ、どの程度、利用するかをまとめた計画書(ケアプラン)が必要になります。ケアプランの作成のポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますので参考になさってください。
・身近な人の介護に備えて知っておきたいこと ~ケアプラン作成のポイント~
★2025年6月30日現在の情報です
(執筆:世古瑞智子 監修:張替 愛)
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