iDeCo(個人型確定拠出年金)は、加入する運営管理機関(金融機関)も、運用する商品も、「自分で選ぶ」制度です。「自分で選ぶ」制度であるため、決まりがなく自由である一方で、迷って自分では決められないことがあります。
運営管理機関は、①運用商品のラインナップ②コスト(口座管理手数料や信託報酬)③使いやすさ、情報提供などのサービス、をポイントに決めますが(参考コラム:運営管理機関って、どう選んだらいいの?)、200社を超える運営管理機関の中からベストパートナーを選ぶのは、結構大変です。
さらに、せっかくiDeCoに加入するんだから運用を始めてみようかな?と、商品ラインナップを眺めた時に、ズラリと並ぶファンド群に戸惑う方も、多いのではないでしょうか。
実際、確定拠出年金の加入者の動向として、運用商品が一定数を超えると運用先を自分で選べなくなる人が急に増える傾向にあると、日経新聞の記事(2017/05/11付け)にありました。
自分で運用先を選べなくなる人が急に増える本数は36本。そして
厚生労働省(確定拠出年金の運用に関する専門委員会)はこの数字を踏まえ、今後、確定拠出年金の運用商品の上限を35本とする方針を決めたとのこと。これは、企業型だけでなく個人型(iDeCo)でも適用となる見通しです。
でも、36本って、一見中途半端な数字に見えるけど、ほんとうに?と疑ったわたし。
日経新聞の記事だけでは詳細が分からなかったので、厚生労働省のHPに公開されている資料を確認してみました。
すると、面白い調査結果がありました。
以下、引用します。
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~運用商品提供数と不指図者の関係について(企業型確定拠出年金)~
運用商品を選びにくくなる運用商品提供数はあるのか、あれば何本なのかを、実際の「運用商品提供数」と「不指図者(※)」の相関関係をみたところ、運用商品提供数が36本以上になった場合、不指図者の割合が急増していることがわかった。
※加入者自身が運用の指図を行わずデフォルト商品が適用され、その後1度も運用の指図を行わずにデフォルト商品が適用されたままのことを、「不指図」とする。
≪運用商品数と不指図率≫
・0~10本:19%
・11~15本:17%
・16~20本:14%
・21~25本:13%
・26~30本:13%
・31~35本:14%
・36~40本:28%
・41~45本:60%
・46~55本:43%
・56本以上:43%
(出典:厚生労働省 第5回社会保障審議会企業年金部会 確定拠出年金の運用に関する専門委員会 参考資料)
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ほんとうに36本から不指図率が急増!傾向ってあるんですね。
ちなみに、デフォルト商品とは
「掛け金をどうするか指定する手続きをしていない場合に、自動的に指定、投資される運用商品のこと」
現状は、デフォルト商品が「元本確保型の商品」(定期預金や保険商品)になっている運営管理機関が多いです。
今回の運用商品数に上限を設ける案は、加入者が運用商品を選びやすくするためのもので、専門委員会では数の制限だけでなく、商品の提示方法の工夫なども話し合われています。
公開されている議事録や資料を見ると、さまざまな立場の現場の意見を聞きながら、改善策が練られている様子が伝わります。
確定拠出年金制度は、企業型、個人型どちらも、加入者が自分で責任をもって運用していくもの。
それだけに、加入者が積極的に運用商品を選択しやすく、本来の目的である「長期運用で年金資産を作る」というゴールをみんなが目指せるような、制度になって欲しいと思います。
★2017年5月18日現在の情報です