老後のための資産形成に「iDeCoを始めたい!」と思っても、60歳まで資金が引き出せないとなると、加入する銀行や証券会社がもし破たんしたら…と心配になり、加入をためらう人がいるかもしれません。
ですが、その心配の必要はありません。
なぜなら、iDeCoは制度のしくみ上、加入者の資産が守られるようになっているからです。
今回はiDeCoの資産がどのようにして守られるのか解説します。
■iDeCoの運営のしくみを理解しよう
まず、iDeCoがどのように運営されているのか、しくみを理解しておきましょう。
iDeCoは、国民年金基金連合会が主体となり実施している制度で、次の3つの金融機関がかかわって運営されています。
① 運営管理機関である「銀行や証券会社」
iDeCoの加入申込窓口となる銀行や証券会社などの金融機関を、運営管理機関と呼びます。加入申込の受付のほか、取り扱う運用商品を選定しラインナップ、運用商品の情報提供や加入者からの運用指図の受付などの業務をしています。コールセンターやWEBサイトの運営も行っています。
② 事務委託先金融機関である「信託銀行」
国民年金基金連合会から委託され、加入者の資産を管理しているのが信託銀行です。運営管理機関が加入者から受付けた運用指図をもとに、資産の売買を執行しています。
③ 運用商品ごとの「提供会社」
iDeCoの運用商品は、運営管理機関により取り扱う商品数や内容は異なりますが、主に定期預金、保険商品、投資信託がラインナップされています。ラインナップされる商品を提供しているのは、定期預金は銀行、保険商品は保険会社、投資信託は運用会社です。
たとえば、わたしが加入するSBI証券のiDeCoだと、
・運営管理機関:SBI証券、業務の一部をSBIベネフィットシステムズ
・事務委託先金融機関:日本カストディ銀行
・運用商品の提供会社:一例として、あおぞら銀行(定期預金)など
となります。
■iDeCo資産を管理する「信託銀行」が破たんしたら?
iDeCoでは、さまざまな機関が業務を分担し、制度を運営しています。見てきたように、加入者の資産管理を担っているのは、事務委託先金融機関である信託銀行です。実施主体の国民年金基金連合会でもなく、加入申込みをした銀行や証券会社でもありません。
信託銀行は、預かった資産を、自行の資産と分けて管理しないといけない「分別管理(ぶんべつかんり)」が法律で義務付けられています。そのため、iDeCo加入中に信託銀行が破たんしたとしても、iDeCo加入者の資産がなくなることはありません。
つまり、iDeCoの加入申込みの窓口となっている銀行や証券会社は、加入者の資産を預かっていないので、もし破たんしたとしても資産には影響しないのです。運営管理機関手数料がちょっと高いけど、大手の金融機関や地元の金融機関を選んだほうが安心かも…、と考えなくていいんですよ。
■iDeCo商品を提供する「提供会社」が破たんしたら?
iDeCoの掛金は、実際には選んだ商品で運用されています。では、運用商品を提供する、銀行(定期預金)、保険会社(保険商品)、運用会社(投資信託)に万が一のことがあった場合は、どうなるのでしょうか。
選ぶ商品により、それぞれに異なるセーフティネットで守られています。ひとつずつ見ていきましょう。
<定期預金>
定期預金は、預金保険制度によって1行あたり元本1,000万円とその利息分が保護されます。いわゆるペイオフの対象です。ただし、iDeCoに提供する銀行に預金している場合は、iDeCoの資産と合算されるので、保護の範囲を超えないか留意が必要です。
<保険商品>
損害保険商品は、損害保険契約者保護機構により保険金・返戻金の90%まで、生命保険商品は、生命保険契約者保護機構により責任準備金等の90%までが補償されます。
<投資信託>
投資信託は、運用は運用会社が行いますが、資金の管理はそれぞれの商品ごとの信託銀行が行い、さきほどお話したように「分別管理」されています。ただし、投資信託で運用している資産で守られるのは、あくまでも「時価」。投資した時の額ではなく、日々の評価額で守られています。
このようにiDeCoは、もし資産を管理する「信託銀行」が破たんしても資産は100%守られており、商品の「提供会社」が破たんした際は、運用商品によっては一部守られない場合もあることがおわかりいただけましたでしょうか。
iDeCoは、さまざまな金融機関が関わり、一見、複雑なしくみに感じるかもしれませんが、その分、何重ものお守りがついた制度でもあります。金融機関の万が一を過度に心配することなく、長くお付き合いできる運営管理機関を慎重に選びましょう。
運営管理機関選びに迷ったら、こちらも参考になさってください。
★2021年8月14日現在の情報です
(執筆 冨田仁美)
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