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顧客の約半数が損失?投信「高値づかみ」のワナって?

日本経済新聞で興味深いタイトルを見かけました。(2018年8月2日付け 朝刊)

『顧客の46%、損失抱える 投信「高値づかみ」のワナ』

記事によると、金融庁が銀行29行で調査したところ、投資信託を保有していた顧客の46%が損失を抱えていた、とのこと。(2018年3月末時点)

銀行からは「利益を出して売却した顧客は調査対象に含まれていない」との不満の声もあったようですが、金融業界出身のわたしには「そうかもね」と共感できちゃう調査結果でした。その理由はコラムの中ほどでお伝えしますね。

記事には、より細かい指標で投資した人たちの実態を分析した結果も掲載されています。そしてこの分析結果を受けた提案も、記事の最後にありました。

では、記事の内容を詳しくご紹介します。

せっかく投資したのに、実際のパフォーマンスの半分程度しか利益を得られていない事実

この事実は、インベスターリターン(以下、IR)という数値から判明したことです。

IRとは、投資信託の基準価額の動きと売買高から、すでに売却した顧客の実現損益を含む投資家全体の平均損益をはじき出したもの。

要するに・・・

あるファンドにおける、
(これまでに投資した人たちの運用成果+今も投資している人たちの含み損益)の平均値

のことです!

投資評価会社のモーニングスターが過去10年間の集計をしたところ、

公募株式投信全体のIRは年率2.2%のプラス
一方、同じ期間の基準価額は4.4%のプラス

となったそうです。

投信の平均保有期間に近い過去3年でみても、基準価額が年率1.6%に対し、IRは0.8%のプラスにとどまっています。

つまり実際に投資した人は、投資先のパフォーマンスの半分程度しか利益を得られなかったことに。

せっかく投資しているのに、そのような結果なんて勿体ない!

インベスターリターンが冴えない理由、それは「心理」

投資先のパフォーマンスをすべて手に出来ないのは、ズバリ「投資には心理が関係している」から。

投資する人は、経験の少なさから相場がドンドン上がってくると、高値圏にも関わらず「さらに上がりそう」との期待から購入をしちゃいます。

逆に、相場がドンドン下がってくると「もっと下がるかもしれない」と不安になり、安値圏で慌てて売却しちゃいます。

リーマンショックで相場が急落した2008年は、振り返ってみれば絶好の買い場。でも、2008年の株式投信の資金流入額は、株価が高値圏にあった2007年のなんと1/7!

相場が上がっている時は心理的に買いやすく、下がってくると手控える、結果として「高値づかみ」をしてしまう典型例です。

また、証券会社や銀行などの販売戦略も、投資する人の心理に影響すると言われています。

たとえば「テーマ型投信」。

テーマ型投信とは、情報技術(IT)やバイオ、新興国といった話題の市場に投資するタイプのファンドのこと。

期待先行ですでに高値になっている株式を組み入れることがあり、ブームが去ると価格の下げが大きくなるのもよくあるパターンです。

ですが、販売サイドは旬のテーマだけに提案しやすいためどんどん売り、顧客もストーリー的に受け入れやすく買ってしまうケースも少なくありません。

実際、わたしが証券会社や銀行で投信の販売をしていた時に、同様の経験をしました。

相場が下落している時は、「このまま様子を見たい」「投資には興味がない」とセールスに聞く耳を持ってくれない人も、相場がある程度上昇すると、「やってみようかな」「おススメは?」と途端に乗り気に。

ヒトの心理からは自然な思考回路ですが、投資としてはダメな結果になりがちです。

では、相場の上げ下げに一喜一憂せず、相場上昇の恩恵を十分に受けるにはどうしたらよいのでしょう。

DC(確定拠出年金)専用投信のIRは優秀

同じように基準価額とIRの比較を、DC専用の投信でみてみましょう。

過去10年では基準価額は年率4.2%のプラスであるのに対し、IRは5.7%のプラス。過去3年でみても基準価額の2.7%に対し、IRは2.9%。
いずれもIRが基準価額のパフォーマンスを上回っています。

その理由は、大きく2つ。

① DC専用投信は、毎月一定額を積み立てる方式で買われるため「高値づかみ」にならない。
② 基準価額が安い時には多く、高い時には少なく買えるので、損益が改善しやすい。

つまり積み立て方式であれば、淡々と分散投資ができ、相場の上げ下げに一喜一憂もせず、相場のタイミングを狙うこともありません。

上述の2つの理由から、結果として「相場上昇の恩恵を十分に受ける」ことが可能になるんです。

相場が上昇していくワクワク感や旬のテーマに乗るのも、たしかに投資に求める「楽しみ」の一つ。投資に求めるものは運用成果だけではないかもしれません。

でも損失を抱えたくない、やっぱりリターンを十分に享受したい、というのも投資をする上での本音でしょう。

冒頭の記事による解決策は、
「投資先を絞り込まず、国内外の株式などに幅広く分散投資する、低コストの投信を長期保有すること。」
とありました。

ご参考になさってください。

★2018年9月3日現在の情報です

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