原則60歳まで引き出しができないiDeCo。
でも「掛金が全額所得控除」「運用益が非課税」という税制のメリットを生かすべく、ちょっと頑張ってiDeCoの掛金を捻出している人、意外に多いのではないでしょうか?
その中には、ここのところの新型コロナ感染の影響で、急に家計の見直しを迫られている人もいるかもしれません。
そんなときは、まずはムダ遣いを見直し、それでも厳しければ、iDeCoの掛金の見直しもアリですよ。
★ 但し、年1回だけ!
なんです。
今回はiDeCoの掛金について、変更のルール、手続きの方法、そしてできれば頑張って少しでも拠出を続けてほしい理由をお話します。
■掛金の変更ルール、年1回とは?
iDeCoの掛金は、1年に1回のみ変更可能です。
ここで言う1年とは、12月分の掛金から翌年11月分の掛金(実際の納付月は1月〜12月)のこと。この間の好きな時期に1回だけ変更できるものです。
だから、たとえば6月に変更した場合でも、また12月から変更することもできるんですね。1年経たないと変更できないよ、というわけではありません。
■掛金を減額するのとゼロにする手続き方法は、全然違うから要注意
変更手続きは、すべて書面で行います。
加入する金融機関の「加入者専用サイト」で必要書類をダウンロードするか、コールセンターに電話し書類を郵送で取り寄せます。
掛金を毎月定額で拠出している人は「加入者掛金額変更届」。
年単位(年1回以上任意に決めた月にまとめて拠出する方法)で拠出している人は、上記に加え「加入者月別掛け金額登録・変更届」も提出します。
この掛金の変更で間違えやすいのが、掛金を「減額」するのと「ゼロ」にするの違い。
どちらも掛金の見直しなんですけど、減額は「加入者」のまま、ゼロは「運用指図者」になるという決定的な違いがあるんです。
まず、iDeCoの掛金のルールについて、おさらいしましょう。
iDeCoの掛金(毎月定額の場合)は、5000円以上1000円単位で、それぞれの加入資格上限額までの間で自由に決められます。
つまり、掛金を減額できる下限は5000円。毎月の掛金を3000円や1500円にはできません。
毎月5000円の拠出も難しいというときは、「加入者資格喪失」の手続きをします。すると「加入者」から「運用指図者」になります。
「運用指図者」になると、新たな拠出はできませんが、これまで積み上げてきたiDeCo資産の運用は続けられます。
掛金の拠出を再開したいときは、あらためて加入者として申込をすればオッケーです。
■掛金ゼロにしてはいけない理由
iDeCoの加入者から運用指図者となると、どんなデメリットがあるのでしょうか。
デメリットは3点。
① コストはかかり続ける
② 退職所得控除の勤続年数に含まれない
③ 拠出しないままズルズルとほったらかしになる可能性
です。
運用指図者でも積み上げてきたiDeCo資産には、保有している間コストがずっとかかります。
資産を管理する信託銀行(どの金融機関で加入しても一律)と、加入する金融機関(金融機関により異なりゼロのところも)の口座管理手数料がかかります。
また、iDeCoの運用資産が投資信託の場合、商品ごとに信託報酬がかかります。
新たな掛金を拠出できないと所得控除のメリットも受けられず、これらのコストがダイレクトに響くことになります。
さらに、将来の受け取り時の退職所得控除にも影響が。
iDeCoの受け取り方法で「一括」を選択すると、「退職所得控除」の税制のメリットが受けられます。
退職所得控除の計算に使われる「勤続年数(※)」は、iDeCoの場合「拠出期間」となるので、拠出できない運用指図者の期間はメリットに生かせません。もったいないですね。
(※)「勤続年数」が長いほど、退職所得控除額が増えるんです。
そして個人的に一番心配なのが、いったん拠出を止めてしまうと、そのままズルズルとiDeCo資産がほったらかしになる可能性があること。
せっかくiDeCoを始めたのに、いつまでも新たな拠出をしないと、当初目指したはずの長期分散投資が実践できません。
コスト負担や税制のメリットを受けられないばかりか、毎月コツコツ拠出することで得られるドルコストの効果も薄れてしまいます。
もしも毎月5000円の拠出なら続けられそうだったら、掛金の減額で拠出を続けることをおススメします。
でも、ライフスタイルの変化や世の中の状況によって、やむを得ず掛金を拠出できない事態も考えられます。どうしても一時的に拠出をお休みしたいのであれば、運用指図者も一考です。
そしてまた拠出可能になったら、iDeCo加入者として戻ってくればいいのです。
今回ご紹介した各種手続きには、1~2か月程度の時間がかかります。数か月の余裕をもって検討してみてください。
10年、20年、30年と長い期間をかけて資産形成をする中で、iDeCoは状況に応じフレキシブルに変更できる制度です。これからも上手に活用していきたいですね!
★2020年4月17日現在の情報です
(執筆 冨田 仁美)
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