新型コロナ感染拡大の影響から、世界的に株式市場が大きく下落した2020年3月。
つみたてNISAやiDeCoで投資をはじめた人のほとんどが、初めて体験する大きな相場の変動だったのではないでしょうか。不安になっている人も多いでしょう。
これまでのコラムでも「続けるのが大切!」って書いてきました。
長期分散で積立投資を続ければ、一時的に株式市場が大きく下落しても、その後の市場の回復で運用成果を得られる可能性が高いからです。
とはいえ、
続けるべし!と書いた私が言うのもなんですが、実際に長期の積立投資をまっとうするのは「言うは易し、行うは難し」なのではないかなーと。
なぜなら、データで検証する20年30年の積立投資の結果と、実際に歩む20年30年では感じ方が違うだろうから。
そこで、今回のコラムは妄想シリーズ第1弾として、私が約30年前に積立投資を始めていたと仮定し、20歳からの資産形成の長い道のりをシミュレーションすることにしました。
そして、無事ゴールできるポイントは何かを考えます。
■32年間積立投資を続けたら、1.3倍に増えた
1988年4月から社会人生活をスタートした20歳の私が、将来の備えに向け資産形成を始めたとします。
当時の投資信託と言えば、国内株式に投資するものばかり。
なので日本株のインデックス型投資信託で、毎月末1万円ずつ積立投資を始めます。
過去のデータがさかのぼれる日経平均株価を、日本株のインデックス型投資信託の代用とし、2020年4月までの32年間を振り返ります。
検証期間中の日経平均株価(各月末)は、
① 投資スタート:27,509円(1988年4月)
② 最高値: 38,915円(1989年12月)
③ 最安値:7,568円(2009年2月)
④ 現在: 20,193円(2020年4月) (日経平均プロフィルヒストリカルデータより みらい女性倶楽部作成)
投資スタートから間もなくバブル経済が崩壊し、長期低迷となった日経平均株価。
日本の株式市場は30年以上たった今も、過去の水準まで回復していません。
積立結果はどうなったかというと、
・積立投資期間:32年間(1988年4月~2020年4月)
・積立累計額:385万円
・時価評価額:約518万円(2020年4月末)
・資産増加額:約133万円(2020年4月末)
なんと!毎月コツコツ1万円の積立をしたら、32年後の資産は約1.3倍に!
もし32年前に一括で投資していたら、今でも含み損のままです。
長期の積立投資は、日経平均株価においても有効だったという結果になりました。
■32年間のうち、約22年も「含み損」を抱える私
さきほどのシミュレーション結果は、32年間をぎゅっと凝縮した「まとめ」なので、途中の紆余曲折は見えません。
結果からは「株価が下がっても続けた方がよかった」ということになります。
ですが、実際には続けられなかったと思います。
なぜなら、32年間(385ヶ月)のうち約22年(261ヶ月)、実に2/3の期間で資産が含み損状態だったから!
ゴールにたどり着く前に、途中で心が折れます。 紫:積立累計額 オレンジ:時価評価額(みらい女性倶楽部作成)
「積立投資は、価格の安い時にたくさん買い付けが出来るから、株価の下落はむしろラッキー!」
と冷静でいられるのは、どれくらいの期間なんでしょう。
シミュレーションでは、積立開始2年で「含み益から含み損」になります。
その半年後には、含み損が約10万円に達します。
この時、社会人3年目の22歳の私。含み損の額に耐え切れず、積立をやめてしまいそうです。
仮に頑張って続けても、継続的に含み益期間となるのは2013年9月から。積立投資をスタートして25年後のことです。
これでは、積立をやってよかったと実感できない期間があまりにも長すぎ。
さらに追い打ちをかけるのが、日常の雰囲気。含み損以上にテンションが下がります。
バブルの崩壊、就職氷河期、大手銀行や証券の破綻、リーマンショック…。
日常生活では、ちょうど今のように、経済の先行きに不安を感じるニュースに包まれます。
私だったら、とっくに挫折しています。
■過去を学んで、ガマン期間への覚悟が重要!
株価が下落する状況でも長期の積立投資を実践できるか、日経平均株価でシミュレーションしてみました。
投資対象が、積立スタート時点の水準を上回らなくても資産を増やせた、という参考事例ではありましたが、実践は難しそうです。
このことから、無事に積立投資を続けるためには、
「過去のデータに学んで、ガマン期間の心の準備」
がめちゃめちゃ重要!
投資対象を分散する等のキホンにこのコツを追加すれば、グッと成功率は高まるはずです。
次回も妄想シリーズ第2弾!今度は投資対象を分散するシミュレーションをしてみます。新たな気づきがあるかもしれませんね。お楽しみに。
★2020年5月22日現在の情報です
(執筆 冨田仁美)