一家の大黒柱を失う「万が一」に備え、多くの家庭で加入している生命保険。
万が一のときには、金銭的にも精神的にも非常に支えになる存在ですが、支払う保険料は家計の上で大きな負担でもあります。保険料の支払いをなるべく抑えながら、必要な保障を確保するには、定期的な見直しが効果的です。
そこで今回は、保険料が高額になりがちな生命保険の、具体的な見直しポイントと手順についてお伝えします。
■保険の見直しをするタイミングはいつ?
生命保険に加入する最大の目的は「残された家族の金銭的な保障」。残った家族が、それまで通りの生活を送れる保障が受けられるのが望ましいですね。したがって、家族の人数や生活状況が変われば、必要となる保障額も変わります。結婚・出産・転職・離婚・子どもの自立など、家族の節目に生命保険を見直すとよいでしょう。
■生命保険の種類と特徴
自分に合った生命保険を選びたくても、商品が多すぎて自力では難しいという声をよく聞きます。独自のサービスを付加したり、各社様々な名前の商品を出しているので複雑に感じても仕方ありません。
そこでまず、代表的な生命保険の種類とその特徴を確認しておきましょう。
① 終身保険
被保険者が死亡、あるいは高度障害状態になった際に、保険金を受け取れます。一生涯保障されるため、必ず保険金を受け取れます。解約返戻金を受け取ることもできるので、貯蓄性のある保険です。保険料払い込み期間が、一定年齢や一定期間で満了する「有期払込タイプ」と、一生涯保険料を払い続ける「終身払込タイプ」があります。保険料は比較的高めですが、最近では低解約返戻金にすることで保険料を抑える商品もあります。
死亡時の葬儀費用や、その他今後の大きな出費に対する備えをしたい場合や、一定期間経過後に解約して解約返戻金を受け取るのに適しています。
② 定期保険
被保険者が一定の保険期間内に死亡、あるいは高度障害状態になった際に保険金を受け取れます。元気に保険期間を満了した場合、満期保険金を受け取れない掛け捨ての保険です。保険期間は10年満期など期間を決める年満了と、60歳までのように被保険者の年齢で決められる歳満了があります。一定期間の保障なので、終身保険よりも保険料は安くなります。
子どもの教育費や養育費がかかる時期だけ重点的に、不足分の保障を付けるのに適しています。
③ 収入保障保険
被保険者が一定の保険期間内に死亡、あるいは高度障害状態になった際に、保険期間の満了まで年金形式で保険金を受け取れます。定期保険と同様、元気に保険期間を満了した場合、満期保険金は受け取れない掛け捨ての保険で、年満了と歳満了が選べます。定期保険が、受け取る保険金額が保険満了まで変わらないのに対し、収入保障保険は、時間の経過とともに受け取る保険金の総額が減っていきます。総額は減りますが、その分支払う保険料は割安になります。
残された家族の生活費の保障や、安い保険料で効率よく保障を得るのに適しています。
■必要保障額の計算方法
必要保障額は、今後かかる支出額から見込まれる収入額を差し引きます。
では、我が家の必要保障額を次の手順で計算してみましょう。
ステップ1: 支出額を計算する
残された家族が、その後生活するうえでいくら必要なのかを3つの費用に分けて計算します。
・子どもの教育費
・家族の生活費、住宅関連費
葬儀費用は一般的に150万円~200万円(※)見積もっておくと良いでしょう。
(※)アンケートによる平均葬儀費用は約178万円(出所:鎌倉新書「第3回お葬式に関する全国調査」2017年)
また、子どもの教育費は「教育費準備のコツ」の記事を参考にして、算出してください 。
家族の生活費は、お子様が独立するまでは現状維持、独立後は半額で計算しましょう。住宅関連費は、賃貸の場合は家賃と更新費用を計算、持ち家の場合は、亡くなった方が住宅ローン債務者であればローンの負担がなくなるので、固定資産税やメンテナンス費用、リフォーム代などを計算します。
ステップ2: 見込まれる収入・資産額を計算する
見込まれる収入と資産額を、以下の項目ごとに計算します。
・教育費貯蓄、学資保険の満期金額
・遺族基礎年金、遺族厚生年金、残された配偶者の予想生涯年収、 現在の資産(教育費の貯蓄以外)、残された配偶者の老齢基礎年金および老齢厚生年金
年金額は、以下を参考にして計算してください。
残された配偶者の年金額は、ねんきんネット等にて確認できます 。
ステップ3: 必要保障額を計算する
費用項目ごとに、支出額から見込まれる収入額を差し引くと、それぞれの必要保障額となり、その合計が必要保障総額です。
今入っている生命保険の保障と比べてみて、いかがでしょうか。
もし足りていない場合は、必要な保障を得られるよう加入を検討しましょう。多すぎる場合は、保障を減らすなどして、保険料をおさえることが可能ですね。
■見直し後の解約や新規加入する際は慎重に
このように必要保障額を計算してみると、「今加入している保険は、我が家の備えに合っていない!」と、解約したり新しい保険に加入したくなるかもしれません。
でも、慌てて解約するのはちょっと待ってくださいね。
1994年頃までに契約した保険は、予定利率が約5~6%という、今では考えられない利率が設定された「お宝保険」です。もし、この時期の保険に加入しているのであれば、解約せずそのまま残した方が良いでしょう。
また、保険を解約せず「払い済み」という方法を使うこともできます。今後の保険料の支払いを中止し、その時の解約返戻金の金額に見合った保障内容に変更可能です。保障額は減りますが、保険を継続することはできます。
そして、見直しの結果、新たな保険に加入し直す場合には、必ず新しい保険に加入してから解約する保険の手続きをして、保険の空白期間ができないよう注意してくださいね。
★2020年8月27日現在の情報です。
(執筆 山本 美紀)
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