2022年3月以降、急激な円安進行が起こり、2022年10月には150円を超える円安水準となりました。
ニュースでよく聞く話題ですが、実はなぜこんなに円安が進んでいるのかわからない、という人は多いのではないでしょうか。
今回は、いまさら恥ずかしくて聞けない円高・円安の仕組みと、私たち消費者目線でのメリットとデメリット、そして、なぜこんなに円安が進んでしまっているのか、わかりやすく説明いたします。
<目次>
円高・円安の基本的な仕組み
学生の頃に一生懸命覚えた「円高・円安」。円の価値が高くなることを「円高」と言い、円の価値が低くなることを「円安」と言います。
1ドル=100円が120円になったら、円高・円安どちらでしょうか?
これは「円安」。1円あたりで計算すると、1円=0.01ドルが0.008ドルに下がっているので、円の価値が低くなっていることがわかりますね。逆に、1ドル=100円が80円になったら「円高」となります。
それでは、どのような状況で円高や円安になるのか見ていきましょう。
円高になるのはどのようなとき?
為替市場で他国の通貨が売られ、円が買われると、円の価値が高くなります。
この状態を「円高」と言います。
日本からアメリカへ自動車の輸出が増えた場合を例に見てみましょう。
下の図のように車を輸出した場合(①)、ドルを受け取った日本の企業は、社員へ給料などを支払うため、ドルで受け取ったお金を円に換える必要があります。
②のようにドルが大量に円に交換されると円の需要が増え、「円高」になります。
円安になるのはどのようなとき?
一方で、為替市場で他国の通貨が買われ、円が売られると円の価値が低くなります。
この状態を「円安」といいます。
例えば、日本で、アメリカからジュエリーの輸入が増えた場合、日本の企業は、ジュエリーを購入したお金をドルで支払う必要があります(②)。
そのため、円を大量にドルに交換することになり(①)、円の需要が低くなって「円安」になります。
円安のメリット・デメリットは何か?
現在、ドル円の為替レートは円安になっていますが、この円安の状況でのメリット・デメリットを説明します。
メリット①日本に観光客がたくさん来る
アメリカに住む人が、日本に旅行に来て、1泊1万円のホテルに宿泊した場合
1ドル100円の時は100ドルで宿泊することになります。
↓円安になると
1ドル200円の時なら、50ドルで宿泊することができるのです。
このため、円安になると外国人は日本に来やすい状況になります。
メリット②輸出製品がよく売れる
日本で200万円で売られている車を、アメリカの企業へ輸出する場合
1ドル100円の時は、アメリカの企業は2万ドル支払うことになります。
↓円安になると
1ドル200円の時なら、1万ドルの支払いで済むのです。
アメリカの企業は1万ドルで車を買うことができるので、日本の輸出製品がよく売れます。
デメリット①日本に住む私たちが海外に行きにくくなる
私たちがハワイに旅行に行き、1万円をドルに両替する場合
1ドル100円の時は1万円が100ドルになります。
↓円安になると
1ドル200円の時は1万円が50ドルになってしまい、旅行で使えるお金が少なくなってしまいます。
そもそも、日本で海外のホテル代を円で決済する際にも、高くなってしまうため、海外に行きにくくなりますね。
デメリット②輸入製品が高くなる!
アメリカで50ドルで売られているワインを、輸入した場合
1ドル100円の時は5000円で買うことができます。
↓円安になると
1ドル200円の時は1万円出さないと買えなくなります。
同じものにも関わらず、円安になると輸入製品がこのように高くなってしまうのです。
円安になるとメリットも多いですが、私たち一般消費者にとっては、デメリットの方が、日常生活で実感することが多いと思われます。
今の円安の考えられる2つの要因
では、今なぜこのような円安水準になっているのでしょうか?
考えられる2つの要因について説明します。
要因① 日本とアメリカの政策金利のギャップ
現在、日本とアメリカでは金融政策が大きく異なり、金利差が大きくなっています。たとえばドルの預金金利が5%で円の預金金利が0.02%だったら、金利が魅力的なドルでお金を預けたいと思いませんか?そうすると円からドルへ交換する人が増え結果として円安につながるのです。
それぞれの政策の違いを見ていきましょう。
<アメリカの金融政策>
アメリカは、インフレ加速を抑えるために政策金利の利上げを行っています。
※政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、各国の中央銀行が設定する目標金利で、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響します。
政策金利の利上げを行うと、金融機関が企業に貸し出す金利や、私たち個人がお金を預ける預金の金利が上がります。そのため、企業は借り入れを控え、個人は余剰資金を預金に入れるべく貯蓄に回すようになります。こうなると、市中からお金が減り、インフレの加速を抑える効果が期待できます。
<日本の金融政策>
一方、日本は金融緩和を継続しており、金利が上がらないようにして政策、景気を良くしようとする政策が続けられています。政策金利が低ければ貸出や預金の金利も抑えられるため、市中にお金が流れ、景気全体がよくなる効果が期待できます。
このように現在は、日本とアメリカで金融政策が異なっており、両国の政策金利に差が生じています。もし日本が引き続き緩和政策を続けていても、アメリカが引き締め政策を強めたり、弱めたりすれば、それにより日本とアメリカの政策金利の差にも影響、すなわち為替にも影響するのです。
要因②有事のドル買い
世界の中心的な通貨であるドルは、戦争や紛争などで世界経済が不安定になると買われやすいという特徴があります。
このため、現在のロシア・ウクライナ情勢の影響から、流動性と信頼性が高いドルが多く買われている傾向があります。これも円安になる一つの要因と言えます。
大きな要因は上記にあげた2つと考えられますが、その他にも貿易や投機など、様々な要因が重なり、現在の円安水準となっているのです。
さいごに
まずは、今起きていることや世の中の仕組みをしっかりと理解することが大切です。
為替がどのように動くのか予測することはなかなか難しいことです。しかし今後も円安が続くと考えるなら、資産のすべてを円で保有している人は、リスク分散の観点からも一部の資産を外貨で保有するなど、これを機会に自身の資産の見直しを行うのもよいかもしれませんね。
★2022年11月29日現在の情報です
(執筆:渡部 ナオコ)
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