先日、こんなご質問をいただきました。
「現在、56歳の会社員です。iDeCoを始めるのは遅すぎますか?」
50代の半ばも過ぎると、自分たちの老後の生活を考えて、人生の資金設計を本格的に考える時期となってきます。
せっかくなら所得控除のメリットがあるiDeCoを活用したい!と思ったのに、60歳までしか入れないと聞いて、入るのをあきらめる方もいるのではないでしょうか。
でも大丈夫。
60歳以降も働き続けるつもりなら、現在56歳のご質問者様もiDeCoを始めるのに遅くはありません。
理由は、2022年5月から制度が変わり、厚生年金に加入している場合(※)は、65歳になるまでつみたてを続けられるようになるからです。
(※)第1号、第3号被保険者の方は任意の国民年金に加入していることが要件
そこで今回は、2022年以降のiDeCo制度の改正点、50代からiDeCoを始めるメリット・デメリット、注意点について解説します。
2022年以降、iDeCoはどう変わる?
2022年に予定されているiDeCoの主な改正点は次の2つです。
① 加入年齢の拡大
現在、iDeCoに加入できるのは、日本に居住し、国民年金に加入している60歳未満の人。その加入年齢が、2022年5月から65歳未満まで拡大することになりました。
ただし、誰でも65歳未満まで加入できるわけではなく、対象となるのは以下の通りです。
・第1号、第3号被保険者で、任意の国民年金に加入している人
60歳以降も会社員で厚生年金に加入していれば、自動的に国民年金にも加入していることになり要件を満たします。また、自営業や専業主婦(主夫)の方は、60歳までに国民年金保険料の未納期間があり、国民年金に任意加入できる場合のみ対象となります。
② 受給開始年齢の引き上げ
iDeCo資産の受け取りは、現在60歳(※)から70歳になるまでの任意のタイミングで行うことになっています。その上限が、2022年4月以降、75歳まで引き上げられます。
ちなみに、今回のご質問の56歳の方がiDeCoに加入した場合の受給開始年齢は64歳(※)。65歳になるまでiDeCoに加入したら、65歳以降75歳になるまでの間で、いつでも受け取りを始められます。空白期間を作らずに受け取ることも、資金計画に合わせて任意のタイミングで受け取ることも可能です。
(※)受給開始年齢は、60歳までの通算加入期間が10年に満たない場合、60歳より遅れて開始します。
50代から始めるiDeCoのメリット・デメリット、注意点とは
2022年5月以降の加入年齢の拡大にともない、要件を満たせれば、50代からでもiDeCoのメリットを活かした資産形成が十分に可能となりました。
最大のメリットは何といっても、掛金を全額「所得控除」できること。50代は若いころと比べ年収もアップし、所得税率が高くなっている人がほとんどでしょう。iDeCoの掛金で所得控除できれば、税負担の軽減効果がとても大きい世代です。
また50代になると、お子さまが独立し扶養から外れ、その分税金があがる頃でもあります。その分を補うためにも、iDeCoの所得控除の恩恵はぜひ活かしたいところです。
一方で、50代からiDeCoを始めるデメリットは、掛金の拠出期間があまり長くないこと。先のご質問者様の56歳だと、65歳になるまで加入したとしても拠出期間は約9年です。
もし、株式で運用するタイプの投資信託を選ぶ場合は、拠出できる期間を考慮し、リスクを取りすぎない資産配分を検討しましょう。
なお、拠出できる期間は65歳になるまでですが、iDeCo資産の運用は受け取り終えるまで続きます。
たとえば、iDeCo資産を20年の年金として分割で受け取る場合、受け取っていない残りのiDeCo資産は受け取り終える20年後まで、選んだ商品でずっと運用が続いています。長い期間をかけて資産を増やしながら受け取りたい人には、とても使い勝手の良いシステムですね。拠出期間があまり長くなくても、受け取り方によって、運用期間を長くできることを覚えておきましょう。
もちろん、年金で少しずつ受け取りたいけど、運用で資産が増えたり減ったりする心配は嫌という人もいるでしょう。その場合は、定期預金などの元本確保型を選ぶとよいでしょう。ただし、管理手数料などコストはかかりますので、その分受取額は目減りします。
いずれにしても、加入前に受取方法を決める必要はありません。受け取る年齢に近づいたらベストな受け取り方法について検討するとよいですね。
改正によりiDeCoの使い勝手がグンとよくなっています。50代になっても十分に始める価値のある制度です。老後のための積み立てができるなら、ぜひ積極的にiDeCoを活用されることをおすすめします。
★2022年2月18日現在の情報です
(執筆 冨田 仁美)
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