アルバイトやパートで働く主婦の場合、年収が150万円を超えると、夫の手取り収入が減ることがあるのはご存じでしょうか?
これは、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」という税金の制度に関係するお話です。これらの控除を満額受けられる給与年収が150万円であることから、「150万円の壁」といわれています。
今回の記事では、妻がパート主婦で働く家庭を想定し、妻のパート収入が増えると夫の税金にどのくらい影響するのかについて、具体例をあげながら解説します!
<目次>
配偶者控除・配偶者特別控除って何?
配偶者控除と配偶者特別控除は、「収入がない(または少ない)配偶者の生活費を負担している人は、税金を減らしてあげよう!」という、税制優遇のひとつです。
1月~12月の妻の収入が一定額以下の場合、夫は所得税と住民税において所得控除を受けることができます。制度を利用するためには、夫が会社員なら年末調整時、自営業者なら確定申告時に申告する必要があります。
配偶者控除と配偶者特別控除は、どちらかひとつだけ利用でき、妻の収入に応じて控除額が変わります。以下、夫の合計所得金額が900万円以下の場合について、控除額をまとめました。なお、900万円を超えると控除額は下がっていき、1000万円を超えるとなくなります。
つまり、妻のパート年収が201万6000円未満の家庭に関係する制度ということです。それでは、利用要件や減税効果などを詳しく見てみましょう!
103万円以下で受けられる「配偶者控除」
配偶者控除とは、パート主婦の給与年収が103万円以下のときに、夫が使える所得控除です。所得税で38万円、住民税で33万円の所得控除を受けられます。
妻の収入要件は、正確には「年間合計所得金額48万円以下」となります。もしもパート収入のほかに不動産所得や資産運用による所得などがあれば、全部を合わせた合計所得金額を確認する必要があるので注意しましょう。
また、年収以外にも「生計が同一であること」や「青色申告者等の事業専従者でないこと」などが主な要件となります。その他の細かい要件は、国税庁HP「配偶者控除」で確認できます。
配偶者控除は、夫が高収入な(=所得税率が高い)家庭ほど、減税効果が大きくなります。妻がパート主婦・夫が会社員の場合、夫が得られる減税効果の目安は、次の表の通りです。
夫の年収によって差はありますが、年間で大体5万円~10万円ほどの減税効果が期待できる制度ということですね!
103万円超で受けられる「配偶者特別控除」
パートでたくさん働くと、年収103万円を超えて配偶者控除の対象外となる人もいるでしょう。その場合でも、給与年収が201万6,000円未満であれば、配偶者特別控除が利用できます。
配偶者特別控除は、配偶者控除の適用ができない方向けの制度です。配偶者控除と同様、夫の所得税では最大38万円、住民税では最大33万円の所得控除を受けられます。
ただし配偶者控除と異なり、妻のパート収入が150万円を超えると、年収が上がるほど、夫が受けられる控除額は小さくなります。そして、妻の給与年収が201万6,000円以上になると夫の控除額は0円となります(※)。
※配偶者特別控除の控除額の詳細は、国税庁HP「配偶者控除額又は配偶者特別控除額の表」をご覧ください。
「150万円の壁」は気にする必要がない!?
「150万円の壁」とは、配偶者特別控除の控除額が満額でなくなる妻の年収が「給与年収150万円超」であることから出てきた言葉です。(2018年の改正により、103万円から150万円に引き上げられました。参考記事はこちら「2018年の配偶者控除制度改正、パート主婦これまでより多く働くキッカケになる?」)
パート主婦の年収が150万円を超えると夫の税負担が増えることから、「150万円の壁」を気にして働いている人もいるでしょう。
しかし筆者は、150万円の壁を意識して働く時間を調整する必要はないと思っています。
なぜなら、控除額が減ることによって増えてしまう税金分よりも、働くことで得られる収入のほうが断然多いからです。具体例として、ひとつ計算してみましょう。
このように、落ち着いて計算してみると、妻のパート年収が10万円あがっても、夫の税金は劇的に上がるようなことはないということが分かります。
たしかに、税金が増えるとなんだか損した気持ちになってしまうこともあるでしょう。でも、働けば働くほど、家計全体で見たときに収入が増えることには変わりありません。
150万円の壁を気にせず、好きなだけ働いて収入を増やし、好きなことにお金を使ってくださいね!
夫の年収が1,095万円超の家庭の場合は?
配偶者(特別)控除には、控除を受ける納税者本人の所得要件もあります。
次の表の通り、夫の給与年収が1,095万円超になると控除額が減りはじめ、1,195万円超になると制度が利用できなくなるのです。
つまり、夫の収入が高い家庭の場合は、妻の年収に関わらず、制度の恩恵が受けにくくなります。なかでも夫の給与年収が1,195万円よりも高い場合は、妻は150万円の壁を意識する必要が全くなくなるということですね。
「働き損」になるケースにはご注意を!
この記事では、パート主婦の150万円の壁はそれほど気にする必要がないことをお伝えしました。
必要以上に年収を抑えることは、家計にも自分のキャリアにもプラスになりません。働けそうならどんどん年収アップにチャレンジしていってください!
ただし、パート主婦に関係するさまざまな壁のうち、「103万円の壁」や「130万円(人によっては106万円)の壁」については、「働き損」になるケースがあるため注意が必要です。
さまざまな年収の壁についての参考記事は、こちらに掲載しています。自分に関係ありそうな人は、150万円の壁と合わせて、理解を深めておいてくださいね!
・パートで働く妻の、100万・103万・106万・130万円…!さまざまな「壁」
・130万の壁の「年収」とは?交通費や副業収入はどうなるの?
・103万円・130万円の壁を超えて働くなら、いくらを目指すべき?
★2022年2月25日現在の情報です
(執筆:張替 愛)
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