妊娠・出産を考えている個人事業主の女性にとって、出産で働けない期間の「お金」は、不安材料のひとつではないでしょうか。
残念ながら、フリーランスや起業家の女性は、出産手当金や育児休業給付金といったパートや会社員向けの制度には縁がありません。しかし、「出産育児一時金」や「国民年金保険料の免除」などの制度は使えます。また、配偶者の扶養に入ることで支出が減らせる方もいます。
この記事で個人事業主の女性に役立つ出産前後の制度を知って、安心して妊娠・出産にのぞみましょう!
<目次>
個人事業主の女性が産前産後に使える制度4選
個人事業主の女性が出産前後に使える代表的な制度は、「妊婦健診の費用補助」「出産育児一時金」「国民年金保険料の免除」「児童手当」の4つです。
妊婦健診費用の補助
妊娠から出産までに必要となる妊婦健診は、自治体から14回程度の費用補助が受けられます。補助される金額は、全国平均で約10.6万円(※)です。
現金で受け取るのではなく、お住まいの自治体の役所や保健センターなどに妊娠したことを申請すると母子手帳と共に「補助券」がもらえます。妊婦健診のときにその補助券を病院に渡すことで、費用の負担が減らせます。
公的の健康保険の対象外である妊婦健診は、全額を自腹で出すとかなりお財布が痛むでしょう。妊娠が分かったら、早めに届け出してくださいね。
※厚生労働省「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について(2019年)より」
出産育児一時金
子どもを出産すると、公的の健康保険から一定金額がもらえる制度です。
もらえる金額は、子ども1人につき原則42万円です。2023年度からは50万円程度まで大幅に増額される方針であるという、嬉しいニュースも出ています!
出産費用(正常分娩のみ)の平均額は約47万円という調査(※)もあるので、出産費用のうち、かなりの金額が出産育児一時金でまかなえると期待できます。
自分で国民健康保険に加入している方は、自治体の担当窓口に申請が必要です。会社員等の配偶者の扶養家族として健康保険に加入している方は、配偶者の健康保険が申請先になります。
※厚生労働省保険局にて集計「第155回社会保障審議会医療保険部会資料(令和4年10月13日)」
国民年金保険料の免除
国民年金の第1号被保険者の場合、出産前後は国民年金保険料の免除を受けられます。
保険料を支払わなくてよくなる期間は、出産予定月の前月から4カ月間。月額16,590円(令和4年度の場合)の保険料を4カ月分なので、合計で約6.6万円もの支出が減らせます!
この制度の良い点は、「保険料を納付したもの」とみなしてくれることです。保険料を払っていなくても、払い続けたときと同じように、老後に受け取る年金受給額がきちんと増えるのです。
ただし、制度を使うためには自治体の国民年金担当窓口に届け出を出す必要があります(郵送も可)。出産予定日の6カ月前からでき、出産後でも間に合います。忘れずに手続きしましょう。
参考:日本年金機構「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」
児童手当
児童手当は、中学卒業までの子どもを育てている親がもらえる手当です。
もらえる金額は子どもの年齢や人数によって変わり、1児童あたり月1万円~1.5万円(※)です。0歳から15歳の年度末までで総額は約200万円にもなるので、将来の教育費に使うこともできる家計にやさしい制度です!
注意点は、申請期限が過ぎた月の分は、さかのぼって受け取れないことです。子どもが産まれた直後や、違う自治体へ引っ越した直後に、自治体の窓口で申請が必要になります。
特に産後は出産した本人が届け出るのは難しいので、「家族に頼む」「郵送」「電子申請」など、無理なくできそうな申請方法を産前から決めておきましょう。
※所得が一定上の場合は、一律5,000円の支給、または支給なし。
配偶者の「扶養」に入れるケースとは?
出産前後で収入が落ちる場合、減収後の収入によっては配偶者の扶養に入れることがあります。扶養には社会保険と税金の2種類があるので、それぞれ当てはまるかどうか確認してみましょう。
社会保険における扶養
配偶者が厚生年金加入者の場合、配偶者の扶養家族になると、国民年金保険料と健康保険料を払わなくても、払っているときとほぼ同じ保障が受けられます。つまり、合計すると年間で約20万円~30万円以上も保険料を減らせる可能性があるということですね。
社会保険の扶養に入るためには、配偶者の健康保険から扶養家族として認定を受ける必要があります。配偶者の扶養家族になる主な条件は、「自分の年収が130万円以下(かつ配偶者の年収の2分の1未満」です。
ほかにも細かい要件があったり、個人事業主の収入の計算方法が健康保険によって異なったりするので、自己判断は難しいです。可能性がありそうなら、配偶者の健康保険に直接問い合わせてみましょう。
税金における扶養
収入が一定以下の場合、配偶者が「配偶者控除・配偶者特別控除」を申告することで、税金の負担を減らせることがあります。
1月~12月の自分の合計所得金額が133万円以下(給与所得のみの方は201.6万円未満)であれば、申告できる可能性があります。
条件などが少し複雑なので、詳しくは次の参考記事をご覧ください。
参考記事「【2020年度】産休・育休の年は、我が家も「配偶者(特別)控除」で減税できる?」
その他
ほかにも、配偶者の勤め先で福利厚生が充実していると、「家族手当」や「配偶者手当」といった名称の手当が支給されることがあります。
詳細は会社の規定によるので、配偶者の勤め先に確認してみましょう。
出産前後の収入減は「数年後の未来」を描いて乗り越えよう
個人事業主は、会社員に比べて出産前後のお役立ち制度が少なく、収入の落ち込みがハッキリと出てしまいがちです。また、子どもが産まれた後に仕事に充てる時間が減ると、収入に悪影響が出る方も珍しくないでしょう。
そのため、「去年と比べて収入が下がった」と、気持ちが落ち込んだり焦ったりする方は多いでしょう。でも、そのようなときには、ぜひ3年・5年・10年後といった「未来」に目を向けてみてください。
会社員と違って、自分の力で稼ぐ力があることは、大きな財産といえます。
会社員には、勤務時間が保育園の開所時間と合わないために退職する方もいますし、週4日や週3日勤務にすると給与体系が変わって大幅に減収する方もいます。
一方、自身の力で稼ぐ個人事業主なら、たとえ働く時間が減っても、「時間単価」が理不尽に低くなることは少ないのではないでしょうか。工夫次第では、仕事と家庭の両立がしやすいといえます。
長い人生の間で、仕事ができる期間は何十年もありますが、子どもが小さい時期は、ほんの数年です。筆者には2人子どもがいます。「赤ちゃんの頃が懐かしい!ちょっと戻ってみて欲しいな」と思って願ってみても、絶対に戻りません(当たり前ですね。笑)。
ぜひ、子どもの成長に合わせて、自分のキャリアも少しずつ育てていく気持ちで過ごされることをおすすめします。今しか経験できない出産・育児を、ぜひ楽しんでくださいね。
★2022年12月23日現在の情報です
(執筆:張替 愛)
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