今年に入り、コロナの影響で大きく株式市場が下落しましたが、むしろ投資を始めるチャンスと積極的に動きだしている方も多いようです。(日本経済新聞「ネット証券、口座開設が急増 株価急落で初心者参入」2020/3/21付け)
どこに投資すればよいか迷ったとき、「みんなは何を買っているんだろう」とランキングを参考にしている人も多いでしょう。
投資信託の販売会社である銀行や証券会社のホームページには、人気ファンドがわかるランキングが掲載されています。銀行では「販売ランキング」、証券会社では「買付ランキング」という表記ですが、どちらも売れ行きの高いファンドのランキングです。
ところが、同じ時期のランキングでも、上位に並ぶファンドの顔ぶれは販売会社によってまちまちです。また同じ販売会社でも、窓口を含むか、ネット経由だけかによりランキングの顔ぶれが違います。
ということは、どのランキングを見るかによって、受け取る情報が大きく異なるということです。
そこで今回は、投資信託の販売・買付ランキングにどんな傾向があり、どう活用するとよいかを解説します。
■メガバンクの販売ランキング(窓口・ネット全体とネットのみの違い)
メガバンク3行のホームページには、窓口とネット両方を含む全体の販売額ランキングと、ネット経由の販売額ランキングが載っています。
3行とも、窓口とネットを合わせた全体のランキングと、ネットだけのランキングでファンドの顔ぶれが異なります。インデックスファンドの割合はネットだけの方が多く、窓口も含まれるとアクティブファンドの割合が増える傾向が伺えます。
また、上位5つのファンドの顔ぶれにも、銀行ごとに特徴があります。たとえば三菱UFJ銀行はインデックスファンドの割合が多く、みずほ銀行は「全体」の上位5つすべてがアクティブファンドで、インデクスファンドは含まれていません。
このように、金融機関によってランキングに並ぶファンドの顔ぶれが違うため、人気ファンドを探したいという目的でランキングを参考にするときは、複数を参照した方がよいと考えられます。
■証券会社の買付ランキング(実店舗ありとネットのみの違い)
実店舗がある大手3社と、ネット証券のSBI証券と楽天証券のランキングを比較してみました。(証券会社は、すべてネット経由の買付ランキングのみ掲載。2020年7月現在)
<買付ランキング 1位~5位>
証券会社のランキングもメガバンクのそれと傾向が似ています。ネットのみと、実店舗がある証券会社だと、インデックスファンドの割合はネットの方が多く、実店舗ありではアクティブファンドが多くなっています。
メガバンクも証券会社でもこのような傾向になるのは、一体なぜなのでしょうか。これは筆者の金融機関勤務経験による推測ですが、「購入するファンドを決める際、ファンドの説明を受けたか受けないか」の影響が大きいのでは、と考えます。
投資信託は、ファンドの数が約6000本近くとビックリするほどたくさんあり、投資経験が豊富でないと、自身でファンドの詳しい中身を知ることや、その中から「このファンドの運用が好きかも」と自分の考えにあったものを選びづらいものです。
ですので「ファンドの中身がよくわからないから、指数に連動してわかりやすいものにしよう」という理由でインデックスファンドを選ぶ方も多いのではないでしょうか。
ところがファンドの中身について口頭などで説明があると、具体的な運用のイメージがしやすくなります。
たとえば、「運用成果がほぼ市場平均となるインデックスファンドより、プロが選りすぐった銘柄で運用するアクティブファンドの方が運用成果に期待がもてそう!」とか「旬のテーマ(5G、サイバーセキュリティ、AIなど)に沿ったアクティブファンドだと、どんな銘柄に投資されるのかがわかりやすくて楽しい!」とか。
説明を受けることでこのようにイメージし、アクティブファンドに投資したい!と思う人が、実店舗がある証券会社や銀行だと多くなるのかも?と考えます。
■ランキングの活用方法と注意点
では、ランキングはどのように活用すればよいのでしょう。
私は、「ファンドが絞り込めない時に参考にする程度」で活用するのがよいと思います。
参考にする際の注意点は3つあります。
・多くの販売会社のランキングは現時点のもので、集計期間も1ヶ月程度と短く、数か月、半年後には顔ぶれが変わっていることが考えられる
・担当者から説明を受けられる証券会社や銀行と、自分で選ぶネット系金融機関では、ランキングの傾向が異なることを理解する
・つみたてに向いていない商品もあることを心得る
そして、商品内容をちゃんと理解できないなら、投資しないほうがよいのは言うまでもありません。
ランキングは、「過去」の集計データです。あくまでも参考程度にとどめ、上手に活用してくださいね。
★2020年8月4日現在の情報です(執筆 冨田 仁美)
※こちらの記事もおすすめです。