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第2話 明るい未来につながる「良いお金の習慣」の育み方(前編/概要編) 【マネー教育最先端のイギリスに住んでわかった「日本に足りないお金の教育」】

前回のコラムでは、知っていることを増やし「お金に対する自信」を育てるために、親子で積極的にお金の話をしましょう!とおすすめしました。

しかし、単に「知っている」だけでは行動に移すことができません。

そこで今回は、イギリスのマネー教育を参考に、「良いお金の習慣」を育くむための家庭の役割についてお伝えします。

 明るい未来につながる「良いお金の習慣」とは

子どもの頃からお金について話をしたり、使ったり貯めたりする経験があると、お金の管理が上手な大人になる傾向があると言われています。つまり、幼少期からお金の会話を通して自分で考える機会を持ち、お金の使い方を実践しながら良い習慣にしていくことが、将来の経済的な安定につながっていくのです。

では、「良いお金の習慣」とはどのようなものでしょうか?
・お金の出入りを把握している
・お金を使う時の判断基準が明確である
・人のためにお金を使える

逆に、「悪いお金の習慣」にはどのようなものがあるでしょうか。
・無計画な衝動買いが多い
・お金の管理がずさん
・お金に対するネガティブなイメージがある

上記は、ほんの一例ですが、「お金の習慣」には行動やスキルだけでなく、考え方や思考のクセも含まれます

お金の習慣づくりは早ければ早いほどよい!

研究によると3歳頃には、すでにマネー教育を受けられる状況が備わっていることがわかっています。(※)
意思疎通ができ言葉のやりとりが可能となる3歳頃には、硬貨と紙幣の種類や価値の違いを判別し、お金と物を交換できるといったお金の基本的な概念がわかるようになります。そして7歳頃までには、ニーズとウォンツの違い、欲しいもののためにはお金を貯める必要があることや、安全なお金の管理方法などを理解でき、予算の概念や長期の計画を意識できるようになります。

このような調査結果も踏まえ、イギリス全土で国家戦略として取り組まれているマネー教育では、3歳頃から年齢別の学習目標を示し、学校や家庭などで取り組むことを推奨しています。

お金の習慣づくりに早すぎることはありません。むしろ「知っている」ことを繰り返し実践し、習慣化するには時間がかかるため、できるだけ早いうちからスタートしたほうが良いのです

「お金の習慣化」に影響を与える場所は、ズバリ「家庭」

イギリスの学校教育では、お金に関する知識を得る機会はあるものの、良いお金の習慣づくりという点では、残念ながら弱いと感じます。テーマに沿ったグループワークや体験型の授業展開は、印象に残っても、そこで得た「知識」を自分の「スキル」にする実践を繰り返す機会がないのです。

では、実践を繰り返せる習慣化に最適な場所はどこなのか。それはズバリ「家庭」です。

なぜなら「お金」は日常生活で必要となる場面が多いからです。

先の研究にもあるように、子どもは周囲の世界を観察しながら学習していくことがわかっています。身近な大人の行動を真似ながら、物事を一つ一つ覚えます。大好きなママやパパのことを本当によく見ていて、同じことをしたがりますよね。そう、子どもたちがお金の習慣を身につける際に、はじめにお手本にするのは、私たち「親」なのです。

「えっ、親が?それは、責任重大・・・」という声が聞こえてきそうですが心配は無用です!
お金の学びの題材は日々の生活の中にゴロゴロ転がっています。良いお金の習慣づくりに、わざわざ難しい話は必要ありません。親が世の中の動きやお金の情報にアンテナを張り、日常に「お金の話題」を盛り込んでいくといいですね。

例えば「今日はトマトの値段が先週よりも高いね。天気がよくなかったから、あまり穫れなかったのかな」というように、子どもにも身近なネタで話をしてみましょう。お金に関する会話が習慣になる、はじめの一歩です。

また、お金の管理の仕方やお金を使う場面を見せながら、子どもにわかりやすく説明するのも効果的です。この時、どうしてその行動をしたか、理由や考え方も一緒に伝えてあげると良いでしょう。まだ言葉や意思のやりとりが少ない小さな子どものうちは、リポーターさながら「お金を払って、牛乳を買うよ。お金と牛乳を交換できたね。」と、ひとつひとつの行動を実況中継するのもおすすめです。

逆に、お金に関する話題が日常的に溢れているのに、あえて子どもと話をしなかったり、子どものお金に関する純粋な疑問に対して「あなたは知らなくても良い」と拒否することは避けましょう。お金に対するネガティブなイメージが「悪いお金の習慣」として定着してしまうと、将来の経済的な不安やストレスにつながる恐れがあるからです。

まとめ

「良いお金の習慣」を身につけるには、できるだけ早い方がいいと言われていますが、何歳からでも遅すぎることはありません。気づいた時が、はじめどきです!

子どもが自立するまでの期間を一つのゴールとするなら、独り立ちするまでは、親が子どもに伴走しながら「良いお金の習慣」づくりができる貴重な時間です。今日から早速、親のお手本を見せながら子どもとのお金の会話を増やしてみましょう。

次回は、「良いお金の習慣」を育むために、家庭で実践できる方法をお伝えする予定です。お楽しみに!

※出典:Habit Formation and Learning in Young Children, Dr. David Whitebread and Dr. Sue Bingham, University of Cambridge, the Money Advice Service, May 2013 (PDF)より、筆者訳出

★2024年5月10日現在の情報です
(執筆:原田幸子

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※これまでの連載【お小遣いで育てる子どもの未来】
全22話はこちらからお読みいただけます。

第1話:FP原田幸子の3歳の娘とはじめた「お小遣い」
第2話:0歳から始められるお金の教育
第3話:お小遣いは、いつから始める?定額制?それとも報酬制?
第4話:子どものお小遣い、定額制であげるなら、いくらがいいの?
第5話:お小遣いの金額、報酬制の場合は、どう決める?わが家の事例紹介
第6話:親子で話し合う「お小遣い会議」のススメ
第7話:お小遣いの約束を「お小遣い契約書」にまとめよう
第8話:「お小遣い帳」をつけてお金の流れを確認しよう
第9話:小さい子どもがお小遣い帳以外でできる、お金の管理法
第10話:やりくり力が育つ魔法の貯金箱、作ってみませんか?
第11話:上手にお金を使えるようになる「お買い物」トレーニングのすすめ
第12話:実践「お買い物体験」でトレーニング
第13話:ワクワク未来のために「お金を貯める力」を育む
第14話:「人のために使うお金」で豊かな心を育む
第15話:安易に「お金を借りる」を選ばないために~教えたい3つのこと~ 
第16話:自分でお金を払ってみたくなる!3つの練習法とは
第17話:親子でキャッシュレス体験をしてみよう
第18話:小学生になったら交通系ICカードでキャッシュレスのお勉強
第19話:お小遣いをキャッシュレスにするなら、親子でルールを決めよう
第20話:親子で防ぐゲーム課金トラブル
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第22話:5歳児のお小遣い、1年の成長を振り返る

 

 

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